海の日 海洋教育の充実が急務だ


 きょうは「海の日」。毎年7月の第3月曜日だが、今年は東京五輪の開幕に合わせて移動となった。

 四方を海に囲まれた日本は、多くの恩恵を受けているにもかかわらず、海に対する国民の関心が高いとは言えない。

 日本EEZに豊富な資源

 海洋国家としての自覚の不足は、日本が本来持っている可能性を生かせないばかりか、その持てる資源を失うことに繋(つな)がりかねない。日本は国土面積こそ38万平方㌔で世界61番目だが、日本の領海と排他的経済水域(EEZ)を合わせた面積は約12倍の約447万平方㌔で世界第6位の広さを持つ。

 その海域は豊かな水産資源を育む豊穣の海であり、海底にはレアアース(希土類)やレアメタルなどの豊富な資源が眠っている。技術開発によって効率よく活用できるようになれば、資源大国の道も夢ではない。

 海洋国民としての自覚や実感が乏しいのは、国民の多くが普段、海と接する機会を持っているわけではない以上、やむを得ない面がある。しかし、毎日のように食卓に上る水産物ひとつを取っても、日本人の生活は海と繋がっている。

 台風や大雨をもたらす湿った空気も海からの水蒸気によるものだ。海は地球温暖化による水温の上昇、酸性化など環境問題の重要なカギともなっている。

 世界的な問題となっている海洋プラスチックごみは、陸上で使われたプラスチックが海を汚染している。この問題は、陸にいながらも海を意識して生活すべきことを教えている。

 海への関心の低下を招いた最大の原因は、義務教育課程における海洋教育の不足だ。戦前から1950年代中ごろまで、理科の授業では1冊の本が当てられるほど海洋教育は充実していた。それが高度経済成長による産業構造の変化などで大きく後退したのだ。

 その後、関心が徐々に高まる中、2017年に改訂された小中学校社会科の学習指導要領で海洋・海事の記述が充実し、国土交通省は授業の参考となる「海洋教育プログラム」を作成した。歓迎すべき動きだが、こうした教材の活用も含め、実際の教育現場で海洋教育がどれだけ進められているのか検証する必要がある。総合的な理解を深めるには、理科でも海についての学びをもっと充実させなければならない。

 海洋国日本の世界に対する責任という点では、海洋の自由の価値を常に訴え、それを守るために積極的な行動を取ることが求められる。また、海洋環境の保全のイニシアチブをもっと発揮すべきである。東京電力福島第1原子力発電所の処理水の海洋放出問題では、国際原子力機関(IAEA)が国際的な慣行から見て問題ないとし、欧米のメディアも同様の見方に傾いている。一方で中国や韓国はなお批判を続けている。

 海洋環境保全に責任を

 科学的な論拠を基に丁寧な説明を行い、太平洋の島嶼(とうしょ)国、東南アジアその他の国々の理解を得ていく必要がある。それは日本が海洋国家として海洋環境の保全のために責任を果たしていく意思表示ともなるはずだ。