五輪安全対策、「おもてなし」忘れず万全期せ
東京五輪の開幕が4日後に迫っている。ほとんどの試合が無観客での開催となるが、テロなどに対する警備には万全を期したい。新型コロナウイルスの感染対策はこれまでにない取り組みだが、「おもてなし」の心を忘れずに「安心安全」な大会を実現したい。
過去にはテロで死者も
五輪は「平和の祭典」でありながら、これまでテロの標的ともなってきた。1972年のミュンヘン五輪では、選手村のイスラエル宿舎をパレスチナゲリラが襲撃し、イスラエル選手やコーチ計11人と西ドイツ警察官1人が死亡した。近年では2016年のリオデジャネイロ五輪で、過激派組織「イスラム国」(IS)に共鳴し、テロを企てていたグループが事前に摘発されている。
東京五輪・パラリンピックの期間中、全国で過去最大規模となる約5万9900人の警察官が警備に当たる。民間警備員も1日最大1万8100人が配置され、自衛隊も8500人が警備や会場での救護支援を行う。岸信夫防衛相は「大会の価値をしっかりと認識し」頑張ってほしいと隊員を激励した。
無観客開催とはいえ、民族・宗教紛争が世界各地で起きている現状を考えれば、決して油断はできない。ホスト国の責任において、選手や大会関係者の安全をしっかり守っていきたい。
近年激しさを増すサイバー攻撃には、特に警戒が必要だ。12年のロンドン五輪では大会期間中、2億回のサイバー攻撃を確認している。大会組織委員会は情報システム部門を一体化したチームを立ち上げているほか、政府も内閣サイバーセキュリティセンター(NISC)が中心となって対策を準備してきた。万全の態勢で臨んでほしい。
東京五輪には、選手や大会関係者約5万人が来日するが、開幕に向け来日が現在ピークを迎えている。一部選手団から新型コロナの陽性者が出ているが、基本的に水際対策が機能しているとみていい。
菅義偉首相は、海外からの入国者の検査や行動管理を徹底するとして「最後まで高い緊張感を持って取り組んでほしい」と語った。政府はルール違反した選手や大会関係者に厳格な処分を行うとしている。そのごとく実行してほしい。
ただ、今回来日する海外の選手や関係者は、無観客試合に臨むだけでなく、一般市民と接触できないなど、ほとんど缶詰め状態に置かれる。選手がベストのコンディションを維持するためにサポートするのがホスト国の役目である。決して快いとは言えない環境の中で、選手たちが少しでも試合に集中できるように工夫すべきである。
制約下でも交流進めたい
そういう点で、地方のホストタウンで事前合宿している海外選手団と地元の中学生とがオンラインで交流したり、自由に外に出られない選手のために買い物の代行をしたりするなどしてサポートしているのは心強い。各国選手と開催国民との交流も五輪開催の重要な意義の一つである。海外選手にさまざまな制約が課せられている今こそ「おもてなし」の国の本領を発揮すべきである。