五輪「無観客」、ホスト国として痛恨事だ
新型コロナウイルスの感染拡大のため、東京都に4回目となる緊急事態宣言が明日12日から8月22日まで発令される。今月23日に開幕する東京五輪は、政府、東京都、国際オリンピック委員会(IOC)などによる5者協議で首都圏1都3県で全会場の無観客開催が決まった。「おもてなし」を合言葉にしてきたホスト国として恥ずかしいことであり、痛恨の極みである。
政治的な判断が働く
無観客開催による損失はあまりにも大きい。チケット収入がなくなること以上に、感染を抑えながら有観客で開催することができず、ホスト国としての責任を十分に果たせないことによる損失だ。
政府や都は最後まで有観客での開催を模索してきた。これまで緊急事態宣言やまん延防止等重点措置の下で、プロ野球やJリーグ、大相撲などの大規模スポーツイベントが開かれても、クラスター(集団感染)が生じることはなかった。五輪開催の予行演習の意味もあった。
メイン会場の国立競技場での感染の可能性についても、スーパーコンピューター「富岳」によるシミュレーションでは「マスクをして間隔を空けて着席すればゼロに近い」(萩生田光一文部科学相)ことが報告されている。人流の増加に対しては、「直行直帰」を呼び掛け、酒類は提供しない方針も出ていた。ある程度感染リスクは増えるとしても、最低限に抑えることは不可能ではなかったはずだ。
しかし以前から「安心安全な大会」を強調し、状況によっては「無観客も辞さず」と述べてきた菅義偉首相は、都への4回目の緊急事態宣言発令を決め、実質的に5者協議に対し無観客開催の意思表示をした。五輪期間中に感染がさらに拡大し、秋の衆院総選挙を前に世論の批判を受けることを避ける政治的な判断が働いたとみるしかない。
五輪開催による感染拡大への国民の不安は、開催反対の野党やメディアによって必要以上に煽(あお)られてきた。安倍晋三前首相が月刊誌で、反日的傾向のある野党やメディアが「日本でオリンピックが成功することに不快感を持っているのではないか」と語り物議を醸したが、開催に反対するのが、立憲民主党や共産党、朝日新聞などであることを見ると、国民の命を守ることより政権への攻撃を狙ったものであることは明らかだ。
彼らが本当に国民のために感染拡大を懸念するというのであれば、なぜプロ野球など人数制限をしながらも有観客で開催されるスポーツイベントを問題にしないのか。
野党は政府を批判するものだが、二大政党制の英国などは国家の威信に関わることでは与野党が協力する。日本の一部野党勢力は、それができない。反政府を超えて「反日」とみられるゆえんだ。
大会盛り上げる工夫を
無観客となったのは残念極まりないが、「人類が新型コロナを克服した証し」にできるよう、関係者は安心安全な大会の運営に努めてもらいたい。テレビやオンラインを通じて大会を盛り上げる工夫も必要だ。多くの国民が選手や関係者を応援していることを忘れないでほしい。