熱海土石流、行方不明者の発見を急げ


 活発な梅雨前線の影響による大雨で、静岡県熱海市伊豆山で大規模な土石流が発生した。これまでに女性2人の死亡が確認され、多数の住民が安否不明となっている。

 行方不明者の捜索に全力を挙げ、発見を急ぐべきだ。

盛り土が崩落の原因か

 土石流は3日午前10時半ごろ発生。JR熱海駅北側の逢初川沿いで大量の土砂が海に向かって約2㌔にわたって流れた。約130棟の建物が被害を受けたという。

 県警や自衛隊などが約1000人態勢で懸命の捜索を行っている。災害発生時から72時間後が生存率が下がる目安の一つとされている。二次災害に十分に警戒するとともに、行方不明者を一刻も早く発見することが求められる。

 一方、県は今回の土石流について、逢初川の最上流部付近に約5万立方㍍の盛り土がされていたと発表した。土石流は盛り土を含む大量の土砂が、最大10㍍以上の深さにわたって崩れたことで発生。盛り土は大半が崩落し、周辺斜面などを合わせた約10万立方㍍が流れたとみられている。

 仮に盛り土が大規模崩落を引き起こしたとすれば、単なる自然災害ではなく、人災の要素もあったことになる。国や県は盛り土の目的や当時の状態などを徹底調査しなければならない。

 土石流現場から南に約8㌔離れた熱海市網代の観測点では、3日午後0時50分までの48時間雨量が316・0㍉となり、平年の7月の1カ月雨量を大幅に上回った。市は2日午前10時、市内全域に5段階の警戒レベルで3番目に高い「高齢者等避難」を発表した。しかし最も高い「緊急安全確保」を出したのは、土石流発生後の3日午前11時すぎだった。

 また気象庁と県は2日午後0時半、熱海市に土砂災害警戒情報を出した。だが、大雨を降らせる「線状降水帯」の発生情報や、重大災害への警戒を呼び掛ける大雨特別警報などは出されなかった。今回の雨は特別警報の発表基準に達していなかったという。

 こうした場合、避難情報発信や警報発表の在り方が適切だったかが問われる。もっとも、盛り土が土石流の大きな原因だったとすれば話は全く違ってくるだろう。

 一方、逢染川沿いは「土石流危険渓流」、一帯は「土石災害警戒区域」に県から指定されている。避難情報や警報の有無にかかわらず、このような区域では早めの避難を心掛けたい。専門家は「熱海周辺は火山性噴出物が積もっており、土中に多量の水分を含みやすかった」と指摘している。

適切な避難促す情報を

 2018年の西日本豪雨や17年の九州北部豪雨など、最近は大雨による災害が7月上旬に相次いで発生している。昨年は九州で記録的大雨が降り、特に被害が大きかった熊本県では災害関連死2人を含む67人が死亡、2人が行方不明となった。

 今回の土砂災害が人災かどうかは別として、地球温暖化で災害が激甚化する中、住民に適切な避難を促すことのできる情報発信が求められる。