都知事選告示 問われる感染対策と小池都政


 東京都知事選挙がきょう告示され、現職の小池百合子氏はじめ立候補をこれまで表明している21人が舌戦を展開する見通しだ。新型コロナウイルス感染拡大対策と暮らしの問題、来年に延期した東京五輪・パラリンピックへの対処、災害に対する都市の脆弱(ぜいじゃく)性が指摘される中で進む一極集中問題など都政の難しい舵(かじ)取りを託すことになる。

目立ったパフォーマンス

 新型コロナ感染拡大の非常時に、今回の都知事選は行われる。首都・東京は1400万人に膨れ上がった人口、予算規模とも国内最大の自治体だ。感染対策で知事は外出自粛、休業要請、補償措置など大きな影響力のある行政権を握る。その信頼のよりどころは有権者の投票だ。

 2期目に挑む小池氏は、公約「東京大改革2・0」の目玉に米国疾病対策センター(CDC)に倣い「東京版CDC」として感染症対策の研究所の創設を打ち出したほか、感染対策を施した災害避難所の設置、都庁の手続きのデジタル化、テレワークのためのサテライトオフィスの整備などを掲げている。

 「感染爆発の重大局面」と緊張感ある記者会見を行った3月から政府に緊急事態宣言発令を働き掛け、「密を避ける」など分かりやすい言葉で感染対策を説明。休業要請に協力する事業者に最大100万円を支給する「感染拡大防止協力金」に960億円など感染緊急対策に8000億円を充てた。ただ、困窮する都民からの批判もあろう。

 また、選挙は小池氏1期目の信任を問うことになる。前回、自民党から抜け駆け的に出馬表明して保守分裂選挙を招いた小池氏は、政治的パフォーマンスや意趣返しが目立った。

 2016年の知事就任後、まず築地市場の豊洲移転を白紙化。それまで議論が尽くされての移転計画だったが、土壌汚染疑惑をめぐり東京ガスからの豊洲用地取得の経緯を調査するため都議会で百条委員会を設置し、石原慎太郎元都知事を喚問した。が、17年都議選で都民ファーストの会を旗揚げすると豊洲移転を公約し、翌年に実行に移す手間を演じている。

 同都議選では公明党と協力して圧勝。都議会自民党との軋轢(あつれき)を深めた。同年秋の衆院選では、希望の党を結党して当時の民進党の議員を公認する奇策に出たものの、「排除」発言で失敗。国政から手を引いたが、政権を狙う野心を隠さなかった。

 1期目公約の待機児童、介護離職、残業、都道電柱、満員電車、多摩格差、ペット殺処分の「七つのゼロ」の達成度も問われよう。このうちペット殺処分以外の「ゼロ」は未達成だ。

 対立候補は立憲民主、共産、社民各党などが支援する宇都宮健児氏、日本維新の会が支援する小野泰輔氏、NHKから国民を守る党党首の立花孝志氏、れいわ新選組代表の山本太郎氏らだが、主要野党と新党が存在感を懸けた争いになりそうだ。

投票率の上昇を期待

 日本記者クラブ主催の候補者共同記者会見もインターネットを通じた質疑となり、感染対策の社会的変容が選挙戦の形を変えることも注目されている。都民の関心が高まり、投票率が上昇することを期待したい。