東京アラート解除 警戒緩めず新しい日常工夫を


 東京都は新型コロナウイルスの感染拡大を警戒して発動していた「東京アラート」を解除し、休業要請を段階的に緩和する「ロードマップ」(行程表)も「ステップ3」に移行した。

 だが、東京都ではここ数日、1日に20人を超える新規感染者が出ている。警戒を緩めることなく、経済活動を徐々に再開させていく必要がある。

19日から制限なしに

 都内では11日、新たに22人の感染者が確認されたが、直近7日間平均は17・9人となり、都が定めた緩和の目安(20人未満)を下回った。同日夜開かれた専門家会議で、病床など医療提供体制も十分確保されているとして、ステップ3への移行が妥当と判断された。

 ステップ3の対象となるのは、カラオケ、バー・スナック(接待を伴わない)、マンガ喫茶、マージャン店、パチンコ店、テーマパーク、遊園地など。営業時間は当面、午前0時までとし、19日から制限なしとなる。19日には、キャバレー、ナイトクラブ、ライブハウスなども解除とする方針だ。

 約2カ月間の休業要請の中で、これらの店舗は経営的に厳しい期間を過ごしてきた。多くの店が要請解除を歓迎し、営業を再開できることを喜んでいる。一方で、感染を予防しなければ、再び休業に追い込まれ、従業員の健康も守れない。どれだけ客が戻ってくるかも未知数だ。実際は喜びと不安が入り混じる中での営業再開と思われる。

 小池百合子都知事は「経済社会活動が全面的に営まれる新たな局面に入る。感染防止策を講じながら生活を営んでいく必要がある」と述べた。

 営業を再開するに当たって、カラオケ店がマイクに被せるマスクを用意するなど、それぞれの業種ごとに感染予防対策を講じている。密閉、密集、密接の「3密」を避けることなどが基本だが、それぞれの業種によっ手立ては当然違ってくる。工夫を凝らしてもらいたい。特にキャバレーなど接待を伴う飲食店やライブハウスは、ガイドラインに沿ってしっかりと対策を取ってもらいたい。

 利用者の側も決して警戒を緩めないよう心掛けてほしい。東京アラートの発動で赤くライトアップされた東京湾のレインボーブリッジや都庁は再び虹色になった。しかし、ウイルス感染リスクが消えたわけではない。

 医療従事者の懸命の努力によって、重症・中症の患者の受け入れなど医療供給体制が確保される状況にあるのは大きな安心材料である。しかし、秋以降訪れる可能性のある感染の第2波に今のうちに備えておく必要がある。PCR検査、抗体検査など検査体制の拡充も、小池知事が言う経済社会活動の全面的な再開には不可欠だ。

予防と経済活動の両立を

 日本全体では新型コロナ収束への道が見えつつあるが、政治・経済の中心である首都東京で感染拡大が続けば収束とはならない。人口が密集し、かつ人々の活動が盛んな東京ゆえの難しさがあり、その戦いが長丁場となることは避けられない。新しい日常の定着と工夫によって感染予防と経済社会活動を両立させていきたい。