「民進」のTPP「提案」 安倍内閣の交渉に批判
トランプ米政権対策を
民進党の機関紙「民進プレス」11月4日号は、環太平洋連携協定(TPP、同紙は「環太平洋パートナーシップ協定」と表記)に「党としての提案」を4㌻にわたって掲載した。タブレット版8㌻の同紙の半分を使っている。
提案路線を掲げる蓮舫代表の執行部になり「提案」と書くのだろうが、内容は安倍政権の交渉内容への批判がほとんどである。が、TPPは民進党が民主党だった当時に政権にあったとき、「平成の開国」と称して交渉に着手しようとしていた。
「どんな利益があるのか全く不明なまま、妥協と譲歩を重ねた安倍政権のTPP協定」の見出しを取る記事では、民主党当時の政権で進めようとしたが、政権交代で安倍内閣が交渉を行って問題ある内容になったという主張をしている。
冒頭に2012年衆院選で、野党・自民党が作成した「ウソつかない。TPP断固反対。ブレない。日本を耕す!!自民党」と描かれたポスターを図に載せ、「安倍内閣は、選挙からわずか3カ月後」に交渉に参加したとして、まず選挙公約を問題視した。
目下の臨時国会で民進党など野党はTPP承認に反対しているが、同紙は「経済連携は積極的に進めるべき」の小見出しを取り、「先の参院選挙の『民進党政策集2016』では『アジア太平洋自由貿易圏(FTAAP)の道筋となっているTPPなどの経済連携を推進する』旨を明確にしている」と触れ、TPP推進派の立場である。
国会ではTPP反対派と誤解されやすいところだ。
反対しているのは安倍内閣が交渉し妥結した内容で、「今回のTPP協定では国益は守れない」(小見出し)と主張。
責任政党をアピールしながら、自民党との違いを際立たせて反対の声を上げるのは民主党時代から民進党が使う手法だが、反対ポスターを作った野党当時の自民党よりは現実的だとの自負はあろう。
同紙は「安倍政権が行った交渉の結果、『聖域』と言ってきた重要5項目の『コメ、麦、牛肉・豚肉、乳製品、甘味資源作物(砂糖)』のどれも関税撤廃の除外対象になっていない」など、農業分野に関して「食の安全も食料自給率も度外視し、日本は農業分野で大きく譲った」(見出し)と批判。
また、工業品については「自動車分野について米国向けに輸出される乗用車は、14年間もの長期間にわたり現行の関税率が維持され、その後に段階的に削減されるが、撤廃までには25年もかかる。さらにトラックに至っては、29年間も関税率が維持されるなど、関税削減や撤廃まで、期間が極めて長い」と指摘。その他、安倍内閣は不利な内容をのまされたと訴えている。
ただ、米国でTPP反対のドナルド・トランプ氏の大統領選当選で、民進党が不満とする安倍内閣の下のTPPでさえ発効できず、米国が工業製品にもっと厳しい関税を課す可能性もあり得る。民進党はトランプ政権の米国相手にどのような経済連携を目指すのか貿易戦略を示す必要があろう。
解説室長 窪田 伸雄