彭帥さん安否など外相に強い対中人権外交求めた「日曜報道」橋下氏
国内を問うサンモニ
中国のウイグル族強制収容、香港民主派への政治・言論弾圧などに対する人権外交が注目されている。岸田文雄首相は中国を念頭に人権問題担当首相補佐官を新設した。
ただ日本に人権外交は不慣れだ。敗戦後、戦勝国に「人道に対する罪」など東京裁判で裁かれて以来、長らく謝罪外交を繰り返してきた。他国に人権で口出しすればやぶ蛇になりかねない。それが時代も変わり、令和の世になると「いつか来た道」に中国が似てるように見える。
14日放送のTBS「サンデーモーニング」は、「風をよむ」のコーナーで中谷元・人権問題担当首相補佐官の就任に触れて「世界で問われる人権」を扱ったが、案の定、日本の向き合い方が消極的な点を強調した。中国のウイグル族強制収容に対して米国、欧州連合(EU)、英国、カナダなどが3月に中国当局者へ制裁を科しても、日本は「深刻な懸念」の表明にとどめて加わらなかったと指摘。
また、2月のミャンマーの軍事クーデターに対する欧米諸国の制裁にも加わらず、ロシアの野党指導者ナワリヌイ氏が1月から収監されたことに対し、欧米指導者が人権侵害と批判して即時解放を求めたのに対して明確な態度を示してないとの訴えだ。確かにふがいない。
さらに名古屋入管施設で死亡したスリランカ人女性、ウィシュマ・サンダマリさんに適切な医療を施さなかったと名古屋入管を告発する遺族の訴訟など、国内の人権問題に触れた。人権は両刃の剣である。同番組の出演者の発言からは、日本も問われるとの意見が多かった。
独自の情報収集必要
出演者の田中優子法政大学名誉教授は、「人権問題はきりがないが、相互批判が大事だ」と述べ、人権に関する情報を収集して批判する繰り返しで少しでも改善することだと唱えた。その国内外の情報収集と批判の繰り返しにも、外圧、マスコミ、政治、法曹界、運動家らの力学が働く。日本独自の情報収集と賢明な判断による人権外交はうまくスタートできるだろうか。
第2次岸田内閣では自民党幹事長人事に伴い外相だけ代わり、衆院選挙に参院議員からくら替え出馬して当選した親中派の林芳正氏が就任。21日放送のフジテレビ「日曜報道ザプライム」で、初の生出演をした。ちょうど中国で女子プロテニス選手、彭帥さんが張高麗・前筆頭副首相との不倫関係を中国の交流サイト「微博」に投稿した後、消息が途絶えた案件が国際問題として浮上していた。
番組ではバイデン米政権が中国に対し、彭帥さんの安否について「独立した検証可能な証拠の提供」を要請したことなどを指摘し、「日本政府のアクション」の有無を林氏に尋ねたところ「注視しているが具体的な検討はない」との返答だった。
同日までに大坂なおみ選手らテニス界はじめ国際社会に中国への懸念と抗議が拡散し、米国は中国に物を言った。その後、北京冬季五輪を控える中国が「証拠の提供」を意識したのか、共産党機関紙の海外版・環球時報編集長のツイッターで彭帥さんの動向に触れ、次いで国際オリンピック委員会(IOC)のバッハ会長と彭帥さんのネット会見をやらせたのは、その風当たりを感じてだろう。
日本のアクションを
が、林氏の言及の通り日本政府はこの風を送っていない。中国共産党最高指導部にいた一男性と女子テニス選手の不倫問題として、“民事不介入の原則”のような発想が働くのだろうか。中国は彭帥さん問題に体制側が介入して「証拠の提供」をしているが、そのこと自体に個人の自由が気遣われる。
レギュラー出演者の橋下徹氏は、「自由、基本的人権、平等、法の支配に反するような行為に関しては、厳しく米国に負けないぐらいのメッセージを中国に強烈に出すべきだと思う」と強い突っ込みを入れた。日本がアクションを起こす日が待たれる。
(窪田伸雄)






