子宮頸がんワクチン接種 定期接種は中止を
全国子宮頸がん被害者連絡会愛知県支部代表 谷口鈴加さんに聞く
接種後に、全身の痛みや運動障害などの重篤な副反応を訴える少女が多数出ている子宮頸がんワクチン。厚生労働省が積極的な勧奨を一時中止してから、6月で丸2年になる。全国子宮頸(けい)がんワクチン被害者連絡会愛知県支部代表の谷口鈴加さんの長女は車いす生活を余儀なくされ、ワクチン接種で「人間らしい生活ができなくなった」。その上、医療費などでさらに重い負担を背負うことになったため、「一日でも早く医療費助成を実現してほしい」と訴える。谷口さんに被害の実情などについて聞いた。(聞き手=森田清策)
副反応で車いす生活/のしかかる高額医療費
名古屋市の7万人追跡調査に期待/行政に被害者支援訴えたい
中2から中3にかけて、3回サーバリックス(子宮頸がんワクチンの一つ)を接種してから8カ月後、中3の2月に症状が出ました。急に泣きながら「足が痛い」とうずくまったのが、最初の異変でした。
その後は、足の痛みは全身の関節痛に変わり、失神や不随運動、めまい、耳鳴りなどが起きるようになりました。入院中に過呼吸の発作が起きて倒れて、30分後に気づいた時には自分の名前も、母親の私のことも分からなくなったこともあります。
娘の記憶は後日戻りましたが、記憶がなくなったり、戻ったりを繰り返している被害者もいます。
――娘さんは車いすを使っていますが、学校への通学はどうしていますか。
短い距離なら、杖を使って歩けます。高校1年生の時は、普通の全日制の学校に通っていましたが、半分ぐらいしか登校できなかったので、今は通信制に転校し、家で勉強しています。
――そうなると、被害を訴える生徒に対する学校側の理解が大切ですね。
娘が通っている通信制高校の先生は、支部設立の総会(昨年10月)に来ていただきました。本来は年に一回、一週間のスクリーニングのために登校する必要があるのですが、今年度は取りあえず特別措置としてスクリーニング参加を免除していただいています。
ただ、学校によって対応が違いますので、学校関係者の方には、ワクチンの副反応被害について理解を深めていただきたいと思います。
――被害を訴える方に多い悩みは。
子宮頸がんワクチンの副反応として積極的に治療していただける病院が近くにないことです。私も名古屋に住んでいますが、治療には静岡や岐阜に通っています。
医療費は平均で年間約100万円超。多い人になると、200万円、300万円になります。子供は体調の悪い中、片道2時間、あるいは3時間かけて通院しなければなりません。
当然、本人一人では病院に行けないので、親は仕事を休むことになります。そうなると、医療費や交通費で出費が増える一方で、親の収入が減るのでとても大変です。ワクチン接種で、子供は人間らしい生活ができなくなったのに、高額の医療費や交通費で、さらに大きな負担を背負うことになったのです。
――愛知県内には、厚生労働省の研究班が専門的な治療を行うとして公表した拠点病院があります。そこで治療を受けない理由は。
会員の方は、県内の拠点病院に一度は通われています。しかし、2、3回通院して見切りを付け、他の病院に変えています。
例えば、うちの娘の場合ですと、拠点病院で診察を受け「ワクチンの副反応かもしれない」と伝えました。当然、医師から治療の提案があると思いましたが、「リハビリを教えてもらって帰ってください」と言うだけで、痛みの原因をきちんと検査するという姿勢が見られませんでした。
また「副反応は1カ月以内に出るもので、8カ月たって出るものではない。いろいろ検査しても何も異常はないし、これは精神的なものだから、騒ぐと逆によくない。ほっておくのが一番」という別の病院の医師もいます。
愛知県内では、多くの病院から副反応問題は分からないから、拠点病院に行くように言われるのですが、その拠点病院の医師は唯一子宮頸がんを防ぐことができるワクチンだ、と被害者親子に力説するような接種推進派です。これでは、治療は進まないでしょう。結局、「(副反応は)心身の反応」(厚労省専門家会議の結論)とする証拠を集めているにすぎないのかなと思いました。
このため、岐阜の病院で今年1月、SCS(脊髄刺激療法=機器を体内に埋め込み、脊髄に微弱な電気刺激を与えることにより痛みを軽減する方法)手術を受けたので、冷え性のような痛みはなくなりましたが、ゼロにはなりません。
――被害者に対する愛知県内の自治体から支援はありますか。
現在のところ、どこの自治体でも、医療費助成などの支援は行われていません。症状によっては、身体障害者手帳の交付を受けることができます。私の娘も交付を受けています。しかし、例えば急に歩けなくなって、それが一年続いたあと、また歩けるようになるなど、症状に波があって固定しない場合、手帳交付は難しい。そういう方は、支援がない状況なので、医療費や交通費の負担が重くのしかかっています。
――政府がワクチン接種の積極的勧奨を一時中止してからもうすぐ2年になります。政府への要望は。
まず定期接種は中止してほしい。子宮頸がんの原因と言われるウイルスにはインフルエンザほどの感染力はなく、ワクチンの効果も限定的です。ですから、今のような定期接種として、皆さんが接種しなければいけないワクチンからは外していただきたい。できるなら、中止してほしい。
ただ、子宮頸がんになった方の中には、私たちが情報を発信していても、ご自分の娘さんにはどうしても接種したいという方はいらっしゃいますので、どうしても接種したいという方のために、任意接種として残すという選択肢はあると思いますが。
また、学校にも通えず、卒業しても受験もできず、就職もできない被害者がいます。そうなると、その子の将来に関わるので、被害者救済や医療費などの補助を自治体に訴えていきたいと思います。
――任意接種でも、情報開示がその前提になります。
私たちも接種した時に、重症の被害が多数出ているという話を聞けば、接種するかどうかを慎重に考えたと思います。注射する時に、まれに副作用として失神したりすることがあるということだったので、私たちには普通の予防接種となんら変わりがないという意識しかなく、「がんを予防できるなら」という思いで接種しました。
しかし、実際はがん予防効果の証拠もないということを副反応が出てから知りました。
――名古屋市はかつて独自に中学女子を対象にワクチン接種の助成を行ったため、約4万人が接種したとみられています。市は今年度、当時接種対象となった女性7万人を対象に健康状態の追跡調査を行う予定で、接種と重篤な症状との因果関係の解明に役立つと期待されています。
幸いにも名古屋市には、とても頑張ってくださる市議会議員がいるおかげで、7万人調査が行われることになっていますので、他の自治体に比べれば、動いているほうだと思います。愛知県では、名古屋が大きな調査に踏み出したので、ほかの自治体でも調査をしていただけるようになればいいと思います。
そこから実際に、医療費支援や生活支援にたどり着くには、時間がかかると思いますが、一日でも早く支援が実現することを願っています。






