子宮頸がんワクチン副反応で「心身反応」決めつけ諫めた「時論公論」
◆究明に努める日テレ
重篤な副反応を訴える子供たちが相次いでいることから、接種奨励が一時中止されている子宮頸(けい)がんワクチンに関する厚生労働省の副反応検討部会の審議が大詰めを迎えている。接種奨励が再開されるか、どうかが注目される中、子宮頸がんを発症する女性が増えていることから、ワクチン接種の必要性を訴える一方で、副反応の原因を「心身の反応」とした検討部会に疑問を投げかけ、さらに原因の究明に努めるべきだとするテレビ番組が目を引いた。
日本テレビ深夜の報道番組「NEWS ZERO」(2月26日放送)は、1年半前に子宮頸がんワクチンを接種し、その直後から、全身の痛みや倦怠(けんたい)感が始まったという少女(14)を取材した。車いすから立ち上がろうとしても、足に力が入らずに倒れてしまう。また、自分の意志とは関係なく体が震えるように動く不随意運動に苦しむ半年前の映像も放送した。
6カ所の医療機関を回ったというが、はっきりした原因は分からなかった。母親は「子宮頸がんワクチン(の副反応)と言ってもどこの病院も聞き入れてくれない」と、医療機関に不信感を募らせていた。
1月20日に行われた検討部会は、副反応の原因は「接種時の痛みが心身の反応を引き起こした可能性が否定できない」との意見で一致している。①神経学的疾患②中毒③免疫反応も考えられるが、これらでは症状は説明できないので、ワクチンの成分が原因ではないとの見方を示している。
だが、少女の症状の深刻さを見る限り、「心身の反応」と言われて、納得できる人は少ないだろう。ましてや当事者や保護者は困惑するばかりだ。少女を診察した信州大学脳神経内科の池田修一教授も番組内で「これはとても全貌が何だなんて分かりません」と、原因究明の難しさを吐露した。こうした実情を真摯(しんし)に受け止めるならば、厚労省の検討会が「心身の反応」で済ましてしまったのでは、その誠意が疑われようというものだ。
◆発症率データに疑問
ただ、「ZERO」で気になったデータもあった。放送の終わりに女性アナウンサーが「女性の生涯で83人に1人が子宮頸がんを発症している」と紹介したが、国立がんセンター対策情報センターの統計では、日本では10万人当たりの発症率は11・11。「83人に1人」という数字はどういう計算で弾き出したのか分からないが、これだけ多くの女性が子宮頸がんに苦しんでいるのだから、副反応が多少あったとしても、ワクチン接種は必要だと言いたかったのだろう。
一方、バランスの取れた解説を行ったのはNHKの「時論公論」(3月5日午前0時放送)の飯野奈津子解説委員。子宮頸がんワクチンは、がんの原因となるウイルス感染の60%を防止すると言われていることを紹介しながらも「(ワクチンは)使われて日が浅いので、実際にがんの発症予防につながったことは証明されていません」と、ワクチン接種推進派の主張を垂れ流すことはしなかった。
また、ワクチンと副反応との因果関係については、専門家が前記の①から③の可能性を検討した結果、いずれも考えられないとして「消去法で残ったのが心身の反応」とした。つまり、「今の医学的な見地から身体的な病気として説明できないから、心理的な影響も考えざるを得ないというわけです」と、現段階ではあくまで推論でしかないことを強調した。
副反応については意識の消失、計算障害、記憶力や視力の低下などを訴える子供もおり、その保護者らは「心身の反応」では説明できないとして、検討会の結論に反発している。飯野解説委員は、副反応の原因が「心身の反応」を前提としたカウンセリングやリハビリで、子供の症状が改善しているなら、その事実をしっかり説明することが重要と指摘した上で、しかし現在の段階では、その事実を示せないのだから、「原因を心身の反応に絞らず、他にも原因があるかもしれないとの前提で対応することが必要」と述べ、検討会に謙虚な姿勢でワクチンと副反応の因果関係を究明することを求めた。
◆結論の段階ではない
ワクチンに含まれるアジュバント(免疫補助剤)が副反応を引き起こしている可能性があると指摘する専門家も出てきているのだから、飯野解説員の指摘は非常に重要である。少なくとも、接種奨励を再開するかどうか、まだ結論を出す段階ではないということだ。
(森田清策)