売れる“韓国叩き”ものに頼って記事が上滑り気味になる新潮、文春

◆やられっ放しの日本

 「慰安婦」問題は消しようもないほどの勢いで燎原(りょうげん)を焼き進んでいるように見える。しかも「慰安婦」だけでなく「靖国」「竹島」「東海併記」など、韓国が次々に日本に繰り出してくる攻撃の矢は執拗(しつよう)で途切れることがない。

 日韓は経済的にも安保上でも重要な隣国関係であることに異論をはさむ人はいないだろうが、それを根底からぶち壊しかねない「反日攻撃」を見ていて、韓国はいったい日本をどうしようとしているのか、と問わざるを得ない。

 一方、日本政府はこうした事態に本気で対処しようとしているのかどうかが疑わしい。まるで「やられっ放し」状態なのだ。米バージニア州議会が同州で使う教科書で、日本海に「東海」を併記する法案が可決され、後は知事の署名を待つばかりになっているが、日本の「ロビー活動」も奏功しなかったのを見れば、政府の対応は後手に回っているか、不十分か、不適切だったか、である。

 「慰安婦」問題では「河野談話」の“検証”を手掛けようとしているが、これが問題の根本的な解決に結びつくとは考えにくい。上述したように、もはや手が付けられない状態の中で、たとえ検証が事実を解明したとしても、韓国がそれを受け入れるとは思われないからだ。

 さらに「慰安婦」問題は韓国だけでなく、わが国の重要な同盟国である米国でも批判の対象となっており、安倍政権に対応を求めている。国連の場でも「ホロコースト(ユダヤ人大虐殺)」と並べて論じられるほど、間違ったイメージが流布しているのは国家イメージの大きなマイナスだ。

◆部数伸びる韓国批判

 日韓関係がこのようだから、週刊誌は「韓国批判」の記事を載せると部数が伸びるという。週刊新潮(3月13日号)は、「ご無体な隣人『韓国』への返礼」という特集を組んでいる。「『朴槿恵』大統領の軟化の条件は『安倍総理の謝罪』」とか、「捏造記事を書いた『朝日新聞』記者の韓国人義母『詐欺裁判』」だとか、「『アジア女性基金』の慰安婦補償を邪魔した韓国の反日団体」といった記事が並ぶ。

 週刊文春(3月13日号)でも同じだ。「『慰安婦問題』A級戦犯朝日新聞を断罪する」の記事で、新潮でも扱っている「慰安婦」問題の切っ掛けとなる記事を書いた朝日記者の韓国人義母が詐欺罪で起訴されていたことを取り上げた。

 これらの記事を読んで、一時、読者は溜飲を下げるだろうが、問題は何も解決しない。週刊誌の役割に「外交問題の解決」は入っていないが、それでも社会に影響の大きいメディアとしては「不満のはけ口」だけに紙面を費やすわけにはいかないだろう。

 「河野談話」の検証が“焼け石に水”だとしても、週刊誌がいち早く「事実」を集めて報じるなど、活躍の方法はいくらでもありそうなものだ。もちろんそれは政府の役目であり、官僚が行うべきであるが、メディアは別途その検証や隠れているものを明らかにする使命がある。

◆「謀略説」載せた新潮

 その役割を忘れて、批判記事にばかり力を入れていると、中には検証不十分な記事や“勇み足”記事も出る。気になったのが「アンネの日記毀損事件」についてだ。

 文春は「都内西部に土地勘の同一犯?」と報じただけだが、新潮は「『海外機関』謀略説」を書いた。しかも韓国特集内の記事としてだ。読者は「海外機関」と「韓国」を簡単に結び付けるだろう。「中韓の“告げ口外交”に鑑みれば、謀略と勘繰られるのも無理もないではないか」としている。

 今月末にはオランダのハーグで核サミットが開かれ、日米韓首脳が会同する。アンネが隠れ住んだのはハーグから60㌔㍍のアムステルダム。「アンネの日記」を切り裂く日本のイメージが良かろうはずがなく、日韓首脳会談を行える雰囲気すらないだろう。

 しかし、いま「謀略説」を出すのが適当かどうか。読者の「あり得る」「そうあってほしい」という隠れた願望におもねっているのか、と勘繰りたくなる記事だ。いまは犯人逮捕に向けて、警察の尻を叩くべき時だ。これだけ多くの場所で、同一の犯行が行われているのに、どうして警察は犯人を絞り込めないのだろうか。読者はこのことにも疑問を抱いている。

 週刊誌には「売れる“韓国叩き”もの」に頼らず、韓国人をして唸(うな)らせる事実を基にした記事を期待したい。

(岩崎 哲)