鳥・哺乳類の動物飼育は家庭や地域ぐるみで

東京大学弥生講堂で、全国学校飼育動物研究会21回大会

大手前大学現代社会学部准教授の中島由佳氏

鳥・哺乳類の動物飼育は家庭や地域ぐるみで

大手前大学現代社会学部准教授の中島由佳氏

 2005年に猛威を振るった鳥インフルエンザから約15年。今、学校での動物飼育にどのような影響を与えているのか、大手前大学現代社会学部准教授の中島由佳氏は語った。子供の成長を育むことを目指す全国学校飼育動物研究会(鳩貝太郎会長)の21回目の大会が東京都文京区の東京大学弥生講堂で行われた。中島氏は安全・安心のもとで、鳥・哺乳類と接する動物飼育を学校だけに任せるのではなく「家庭や地域ぐるみで考える時期に来ている」と口頭発表で訴えた。

鳥インフルやアレルギー問題に伴い、教職員への負担増

 鳥インフルエンザが学校飼育動物にどのように影響したか調査しようとしたが、鳩貝会長が2005年より前に筆記形式で調査したもの(以下鳩貝調査)があるだけで、その後は調査されていなかった。現状調査のため2017年7月から2018年10月にかけ全国学校総覧掲載の小学校2万校から無作為に10%の2062校余りに電話調査(以下現在調査)。内容は「動物飼育の有無」「屋内・屋外」「飼育種」「数は」を聞き取り調査し分析した。

 インフルエンザが猛威を振るった前後のデータがないため、2003年から2012年ごろ小学生だった大学生(兵庫、岡山、鹿児島、群馬、東京の大学)から「動物飼育の有無」「屋外・屋内」「飼育種」「飼育数」「誰が飼育担当」を聞き取り調査、無効28人を除き、671人の回答(以下直後調査)を分析、現在調査と比較検討した。

 直後調査で動物を飼っている93・4%、現在調査85・8%となっており、若干減少。鳥類に限定しているわけではないので、減少の原因が鳥インフルにあるとは確定できない。そこで、鳥・哺乳類等を飼育という項目に着目した直後調査では86・4%から現在調査49・1%に減少している。また、魚類・両生類、昆虫のみを飼育に関しては13・6%から50・9%に増えている。鳥・哺乳類を飼育が50%を切っているのが、想像以上の減少。鳥インフルが人間に感染したり、人間に悪い影響を与えるのではないかという恐れが学校・教師の間で広がり、鳥類の飼育に二の足を踏む傾向を示している。

 三つ目の調査として、動物飼育を行っている学校に継続困難な事象を紙およびWEBで調査(以下困難調査)した。鳩貝調査で11位だった児童への感染やアレルギーへの心配が困難調査では4位に“躍進”し、ここ10年で心配事の中で高くなってきた。鳩貝調査では長期休業中の世話、動物のけが、病気が心配も大きなウエートを占めている。鳩貝調査では児童が当番・世話が82%で主流だったが、困難調査では、教職員が世話が57%を占め、児童が当番の17・9%を大きく上回っている。

 ここ数十年で鳥・哺乳類の飼育が漸減的な傾向を示してきた要因は鳥インフルやアレルギー問題だけではなく、教職員への負担増にも関係している。教職員にのみ負担を強いるのではなく、安心・安全を担保しつつ、動物の温かさを感じることができる学校での動物飼育の環境を模索。継続・維持していくことを地域ぐるみで考える時期に来ている。