故郷で感じた少子高齢化


 お盆に実家に帰省したが、今回は特に地方の少子高齢化の現状を垣間見る思いがした。筆者は夫婦どちらも九州の出身で、帰省の際は両方の実家に行くことにしている。

 筆者の実家で母親がしみじみ話していたのは「近所で子供の声がしない」ということだった。

 厚生労働省の調査では18歳未満の子供がいる世帯は全体の2割程度である。既婚夫婦の平均子供数は長年2人を保ってきたが、それも少しずつ減り始めているから、子供の声がしなくなっても珍しいことではない。

 また、筆者の故郷は日本を代表する企業の工場が地域経済を支えてきたが、この十数年はその力が下降線をたどり、人口減少も全国有数のスピードで進んでいる。帰省中に見たニュースでは、子育て支援を手厚くして若い世代を呼び込もうという町の取り組みが紹介されていた。

 妻の故郷では、駅から実家近くまで通っていた路線バスがいつの間にか廃止されていた。昨年までは義父が車で迎えに来てくれたが、高齢ドライバーということで今は運転を控えている。そのため駅からタクシーで移動したが、その時の運転手の「自分たちの今一番の仕事は、高齢者を病院に送り届けること」という言葉が印象的だった。

 妻の実家では義父の免許返納を話し合っていた。親族は返納を勧めているが、車がなければ生活に影響があるため、義父母は結論を出せずにいた。返納すれば自治体から交通費の補助が出るが、病院や買い物に行くには足りないという。

 今回は少子高齢化の暗い話も多かったが頼みは若い世代の結婚だ。少子化解決の鍵は若者の未婚化、晩婚化の解消である。筆者にも適齢期の甥(おい)や姪(めい)たちがいて、近いうちにそういう話があるのではないかと、この時だけは集まった家族で盛り上がった。地方には、こういう家族の形、地域のつながりが残っているのが救いである。

(誠)