「あなたの知らない筋肉の世界」 サルコペニア予防の鍵は「白筋」

順天堂大学大学院スポーツ健康科学研究科・町田修一教授

 高齢の健康長寿を維持・改善するには筋肉の量を保つことが必要だ。それには高い筋力を出す白筋を増やすための「過負荷な運動」が不可欠だ。「今、筋肉が熱い!?~あなたの知らない筋肉の世界~」と題して、このほど、老年学・老年医学公開講座(主催・東京都健康長寿医療センター)が練馬文化センターで行われた。順天堂大学大学院スポーツ健康科学研究科の町田修一教授は「筋活で延ばす健康寿命 今からでも遅くない筋肉づくり」と題して講演した。

維持のために日常生活の中で鍛錬を

「あなたの知らない筋肉の世界」 サルコペニア予防の鍵は「白筋」

順天堂大学大学院スポーツ健康科学研究科・町田修一教授

 骨格筋の働きは、①体を動かしたり・支えたり②力を出す③糖の取り込み④四肢の末梢(まっしょう)静脈血管から心臓に血液を送り返すポンプの役目⑤免疫機能の手助け⑥アミノ酸の貯蔵⑦体温の維持・基礎代謝⑧ホルモンの産生⑨水分の貯蔵――など多岐にわたっている。

 認知機能には良いと言われる有酸素運動の一つウオーキングだが、加齢に伴い骨格筋量が低下するサルコペニアの改善には工夫が必要である。

 骨格筋は何十万本もの髪の毛くらいの細い筋線維が束になってできている。人体の筋肉には大きく分けて、長距離選手のように、疲労しにくい赤筋(力は弱いが疲れにくい遅筋)と短距離走の選手のように、運動強度が強い時に使われる白筋(疲れやすいが強い力を発揮する速筋)の2種類がある。高齢者と若者の筋肉を比較すると、赤筋の量はほとんど変わらない。しかし、白筋は高齢になると、減少していることが分かった。

 サルコペニアの予防・改善には、疲れやすいが、高い筋力を出す白筋の量を落とさないで、いかに維持していくかが大切なこと。立ち仕事や比較的速度の遅いウオーキングの時は、赤筋線維が優先して使われるので、サルコペニアの予防・改善のためには、少し運動の強度を高める「過負荷な運動」が必要になる。歩行においても、少し大股でとか、歩幅を広げて速歩することが有効だ。

 速歩はずっと行うのが難しいので、普通のウオーキングとインターバルで行うと白筋を鍛える効果が上がる。しかし、運動不足の状態から急に負荷の高い運動を始めると、循環器や関節などの運動器に過度な負担が掛かってしまう。徐々に時間を長く取るようにすることが肝要だ。

 普段の生活の中でも、階段を上り下りしたり、和式風の生活様式で立ったり座ったりする時に使う足腰の筋肉など、白筋を使う場面は多々ある。歩く時も加速を付けたり、急に止まったりする時も白筋を多く使っている。意識して行動すれば、日常生活の中でも、白筋を鍛える場面はたくさんある。

 体全体で約500もの筋肉がある。年齢とともに、一番筋肉が萎縮するのは「老いは足から」と言われるように、上半身よりも下半身・足から来る。歩けなくなるのを防ぐためには太腿(だいたい)前部の大腿四頭筋を鍛えることがポイント。それと、腹筋も年齢とともに、衰える場所だ。