レゴブロック研修で相互理解を深める
保育士を辞める理由で最も多いのは「職場の人間関係」―。今年3月に東京都が公表した保育士の実態調査によると、保育士の退職理由として「給料が安い」「労働時間が長い」などよりも「職場の人間関係」を挙げる声が一番多いことが分かった。(石井孝秀)
保育士の離職防止へ都内でワークショップ
この問題解決のため、保育園の運営などを行うディアローグ(代表取締役・井口智明)はこのほど、保育士の離職防止策の一つとして、玩具のレゴブロックを使った保育士向け研修の実施を発表した。レゴブロックによる研修はNASA(米国航空宇宙局)などでも組織力・チーム力向上のために導入されているプログラムで、10日には首都圏の保育園園長20人を招いたワークショップが都内で開かれた。
各参加者は講師から与えられたテーマに沿ってブロック作品を制作。ほかの参加者に自身の作品を解説しながら質問・応答を交わし合うことで相互理解を深めることを目的としている。使用ブロックは色も形も厚みもさまざまで、ブロック以外に乗り物や動植物、はしごやドアなどのパーツも準備されている。
玩具のレゴを使う理由として、特別な技術・能力は不要な上に直接伝えづらいことも伝えやすく、アイデアや価値観を引き出しやすいというメリットがある。最終的にチームに必要な共通の意識や目標を作り出していくことが目的だ。
作品のテーマとして提示されたのは「職場マネジメント」と「1年後の私の園」の二つ。参加者たちは扉の開いたドアを設置することで“風通しのいい職場”を表現したり、トラブルやリスクの象徴として保育園内外に骸骨や猛獣のパーツを置いた作品などを作った。
研修に参加していた女性園長は、自身の保育園を陸地から出港する船に見立て、その船を魚が引っ張っている作品を作成。その後、ほかの参加者と話し合う中で「無意識だったが、保育園を支えてくれる地域や保護者の人たちを魚で表していたことに気付かされた」と話した。参加者の一人、美奈見ここわ保育園(大田区)の屋上真導園長(34)は「作品の説明をしていると、その人の持つ心理が見えてくる。自身の価値観や考え方を相手に伝えて共有するトレーニングになるので、自分の園でもやってみたい」と感想を述べた。
同社保育事業部の赤松奈々子部長は「履歴書を見ると毎年職場を変えている保育士も多い。それが異常と思われず常態化している。また、保育士たちが考え方の違いで衝突してしまうこともある。保育士向けの研修の多くは保育関連の知識や実践が一般的なので、職場のチーム力向上を目的とした研修がもっと必要だ」と仕事場での人間関係が大切であることを指摘した。