デジタルが変える学校教育の未来
国際大学GLOCOM 豊福晋平准教授
一斉授業にこだわる教育現場
教員を目指す学生・大学院生をはじめ、教育問題に関心のある人のための人材育成講座「こんぺいとうゼミ」(主催=NPO法人BOON・内山葉月理事長)がこのほど、都内で行われ、「デジタルが変える学校教育の未来」と題して講演会が開かれた。国際大学グローバル・コミュニケーション・センター(GLOCOM)の豊福晋平准教授は「教育のデジタル化」に関して国内・海外の現状と課題を報告。参加した大学生ら30人余は講師の話に熱心に耳を傾けた。
端末機材と環境の整備不可欠/子供が日常使う「文具化」必要
欧米ではパソコン、タブレットなどを学校で使う場合でもICT端末は個人の持ち物で、鉛筆やノートと同じ「文具」のように扱われている。日本では先生が管理制御し、授業を進めるための「教具」として扱われている。利用法では欧米が知的生産ツール、汎用クラウド利用、授業でも、持ち帰って宿題でも利用できる。日本は教材の提示、単純回答集約が中心で授業でしか使えないようなパソコン設定にしてある。欧米では学校内外でメール・SNSを日常的に使用している。日本は学校で使うものは学校だけ、双方向サービスが無い。
デジタル機器の広がりとともに、学校での機材普及が喫緊の課題となっている。家で使っているパソコンを学校に持参したり、学校側が授業でも、家庭学習でも使える汎用パソコンを生徒一人一人に支給するなど、端末と環境の整備が不可欠だ。
学校から貸与されたデジタル機器で犯罪に関わるネットにアクセスしたり、ネット通販で高額な買い物をしたり、暴力や性犯罪につながるようなネットと関わったり、周囲に迷惑を掛けることを危惧して、ネット環境を学校内、授業内に限定する方向が現在の日本流だが、規制を設ければ、問題解決になるというのはナンセンス。自分の持っているスマートフォンやタブレット、パソコンからでも環境があれば、アクセスできる。デジタル機器の使用マナーを教育した上でのことだが、もっと、子供を信用してよいのではないか。学校での学びと家庭での宿題など学習の情報を一括管理して学習の進み具合、振り返り、つまずきの検証をデジタル情報で行うことも可能になる。
“日本流”の教育では、「ワクワク・意欲・志」との出合いに重きを置いた動機付けの教育が不足している。なぜ学ぶか、どう生きたいかということはさておき、「まず勉強」「より偏差値の高い学校・大学へ」と親や周辺の環境から叱咤(しった)される。浅く広く基礎を固めれば、応用ができるという考え方が主流。学習者の生活経験に寄り添った「きっかけ」「動機付け」が必要だ。複数の生徒が電子機器を使い、情報を収集、意見を出し合い、取捨選択してまとめ、発表する授業が可能になる。