中学受験だけの算数?
12月も早くも中旬となり、入試を目前にした受験生は最後の追い込みに忙しいはずだ。それを見守る親御さんも気が気でない毎日を送っておられるだろう。
田舎育ちの筆者には、受験と言えば高校や大学しか思い浮かばないが、東京には中学受験や小学受験の子供を持つ親がわんさといる。そのうち、私立中学の受験生を持つ親は次のような算数の問題に出くわすはずだ。
「1個80円のミカンと1個120円の柿をあわせて16個買うと1560円でした。ミカンと柿をそれぞれ何個ずつ買ったでしょうか。」
ちょっと計算が面倒な「鶴亀算」の問題だが、普通の大人なら、ミカンをX個、柿をY個買ったとして連立方程式を立てて解くだろう。しかし、これは方程式を学んでいない小学生の問題だから禁じ手。それで2、3の技巧を凝らした中学受験用の解き方が必要だ。それを知らないと、教えてあげることもできない。
さらに悩ましいのは、鶴亀算だけでなく、食塩水の濃度の計算や旅人算、流水算、通過算、植木算、…など、それぞれ独特の解法が必要な問題がこれでもか、これでもかと試験に出てくることだ。小学校の授業を聞いているだけでは、とても対応できる分量ではないので、やはり、それぞれの受験用の解き方を知って、機械的に最短時間で解かなければならない。難関中学の合格者はこんな解法の体現者であるわけだ。
ただ、その受験用の解法は中学に入って方程式を学ぶと必要なくなる。思考力を養うため多少は有用かもしれないが、結局は中学受験を突破するためだけに多くの時間を費やして身に付ける解法でしかない。
受験生に順位を付けるため仕方のないことかもしれないが、こんな中学受験の算数が、数学に対する好奇心や数学の楽しみを枯渇させているのではないだろうか。(武)