秋田市の3校で題材もとに「道徳」の公開授業
小中校の道徳教育研究大会が開かれる
「特別の教科 道徳」が、小学校では今年度から、中学校でも来年度から完全実施される。このほど、全国小学校道徳教育研究大会・東北地区中学校道徳教育研究大会・秋田県道徳教育研究大会が秋田市の3校を会場に開かれた。題材をもとに自分の意見を発言し、相手の考えに耳を傾ける――その中から、自己を内省し深めていくという道徳教育の本来の姿が垣間見られた。(伊藤志郎)
秋田市立外旭川中学では「決まり」は何かを考える
秋田市立外旭川中学校が担当した3年の授業のテーマは「二通の手紙」。決まりとは何か、を考えさせる授業だった。
舞台は動物園。ベテラン入園係の元(げん)さんが、入園終了時間をわずかに過ぎて、10歳くらいの姉と4歳くらいの弟を入園させた。しかし2人は園内で迷子になり大騒ぎに。約1時間後に見つかったのだが…。元さんは、子供の母親から感謝の手紙をもらった。しかし入園規則には、小さい子は保護者と一緒でないと入れないとあり、しかも入園終了時間を過ぎて入場させたこともあって、元さんは上司から懲戒処分の手紙を受け取る。結局、元さんは職場を去っていった。
事前に子供たちはこの話を知っており、アンケートでは、決まりを破ると信用を失う、守ると気持ちがいいなどの意見が出されていた。しかし約半数の生徒は、決まりを守るのは面倒くさい、厳し過ぎる、少しぐらいなら破ってもいい、納得できないなら破ってもいいなどの意見も出ていた。
授業が始まった。
黒板に、自分だったら「入園させる」「させない」「わからない」の項目がある。生徒はその下に自分の磁石付きネームプレートを貼っていった。
先生が理由を聞くと、「入園時間を2、3分過ぎているが、小遣いを貯(た)めたお姉ちゃんが弟の誕生日に入れさせたいと来たのだから特別に入園させても良いのではないか」「園内にはまだ人がいるから安全だと思う」。
逆に「事故があったら大変」「一度破るとズルズルと癖になる」などの意見が出た。
しかし記者が一番驚いたのは、発言する生徒にクラス全員の目が集中したこと、そして発言の内容にかかわらずみんなが拍手したことだった。
担当の先生は授業を始める前に、隣室で、集まった教師に「授業への心構え」を説明したが、その中に「思いを語る安心さ」を重要な柱にしている旨を強調していたが、まさしくこれだと思った。
担当の教師は、学習形態として、ペアになって意見交換するとか、4人組、車座、劇場型などの「引き出し」を持っている。また、水色=反対、ピンク=賛成、黄色=決められないなどの付箋紙やカラー紙コップなどの小道具を駆使して、生徒たち全員が発言しやすくする工夫をしているという。