「子供の貧困」問題の解決に向けた連携を

日本財団がフォーラムを開催

 厚生労働省の調査によると、日本の7人に1人の子供が貧困状態にある。生まれ育った家庭環境などが原因で、学力や進路選択に生じる格差などが問題視されている。この「子供の貧困」問題に対して日本財団は10月24日、現場で活動するNPOや自治体、企業などを招き、問題解決に向けた連携を図るためのフォーラムを東京都港区赤坂の同財団ビルで開催した。

NPO・自治体・企業などが取り組みを報告

「子供の貧困」問題の解決に向けた連携を

昭和こども食堂の取り組みを紹介する荻野友香里さん=10月24日午後、東京都港区赤坂の日本財団ビル(石井孝秀撮影)

 フォーラムでは同財団が2016年から全国に設置を進めている支援施設「家でも学校でもない第三の居場所」の取り組みを紹介。全国12拠点のうち、大阪府箕面市拠点の山本将マネージャーが子供たちの自立心を高めるための取り組みを報告した。

 同拠点では、毎日15~60分設けている「わくわくタイム」の中で、子供たち自身に駄じゃれコンテストや段ボールハウス作りなどのイベントを企画・運営させている。挑戦心や持続力を鍛えることで、次世代に引き継がれやすい貧困の連鎖を断ち切ることを狙いとしている。今後の課題に山本マネージャーは「地域のシニア世代で一芸を持った人と、ウィンウィンの関係を持ちつつ子供たちに何か提供してもらえる場をつくっていくこと」を挙げた。

 企業や地域との具体的な連携事例については、栃木県宇都宮市で「昭和こども食堂」を運営する同県若年者支援機構の荻野友香里さんが報告した。今年8月に開催した夏祭りにはカルビーが協賛。寄付金以外に社員8人がボランティアとして参加して、カルビー商品に関するクイズを行った。また、定期的に野菜をもらう農家と連携して日帰り農業プログラムを企画し、サツマイモ掘りなどをしている。荻野さんは「高校生が実体験を通して学びたいと(ボランティアに)参加するケースもある。協力の輪を広げて子供たちを支えていきたい」と訴えた。

 外資系IT企業の日本オラクルでコーポレート・シチズンシップ(企業の社会貢献活動)を担当する川向緑さんは、同社での取り組み事例を発表した。子供たちへの学習支援を行っているNPOなどへの寄付からスタートし、さらに子供たちを社員食堂に呼んで社員と交流する取り組みを実施。「子供やそのお母さんにとってはものすごくインパクトのある体験だったと後で知った。勉強をしなさいと一言も言ったことのないお母さんが、そこで刺激を受けて『勉強って必要かも』と考え直してくれた」と川向さんは話した。

 同財団の子どもの貧困対策チームによると、今後は企業とのパートナーシップ制度を提携することで各企業の強みやリソースを生かし、子供支援のためのさらなる拠点作りやプロジェクトなどを進めていく方針だ。