睡眠負債~その正しい理解~

子供の成長に欠かせぬ十分な睡眠

明治薬科大学リベラルアーツ准教授 駒田陽子氏

 「すいみんの日」市民公開講座「睡眠負債~その正しい理解~」(江戸川大学睡眠研究所・柏市共同主催)がこのほど千葉県柏市のアミュゼ柏で行われた。明治薬科大学リベラルアーツ准教授の駒田陽子氏は「子どもにも睡眠負債ってあるの?」をテーマに子供の睡眠事情、成長に必要な睡眠時間をどう確保するかなどについて来場者と共に考えた。

適切に寝て時間を活用すれば成績アップ

睡眠負債~その正しい理解~

明治薬科大学リベラルアーツ准教授 駒田陽子氏

 「学校で体も頭もだるくて授業に集中できない」こういった声を中学生・高校生の間でよく聞くようになった。日本だけでなく、米国の中高校生を対象にした調査でも「朝起きた時に十分休めたと感じられない」と答える生徒が6割くらい、「夜なかなか寝付けない」が4割に上っている。平日の平均睡眠時間が8時間未満の中高生の割合2006年に45%だったものが、2011年時点で6割に上っている。

 日本の中高生の現状が文部科学省で報告されている。小学生だと午後9時から10時、午後10時から11時が就寝のピークになっている。これが、中学生になると1時間後ろにずれる。高校生になると、さらに1時間後ろにずれる。中学・高校と学年が進むと、親も「早く寝なさい」と口やかましく言わなくなる。周りの友人も同じような生活なので問題だと感じていない生徒が多くいる。平成28年発表された睡眠時間のデータだと中学1年で8時間を切り、高校3年では受験勉強の時間を捻出するためか、7時間を切ってしまっている。

 大人だと7~9時間と言われている睡眠だが、子供は成長途中なので、8時間の睡眠時間が必要だと言われている。小学生だと9時間から11時間と言われている。必要な睡眠時間が日々取れていないので、“睡眠の借金”が積み重なっている。

 かつて大学受験に「四当五落(しとうごらく)」という言葉が盛んに言われた。しかし、今や6時間睡眠で眠い目をこすって、無理やり勉強するよりも、8時間、十分な睡眠を取って、しっかり勉強する方が成績が上がることが、分かってきた。

 睡眠は、ただ単に休息している状態ではなく、脳・心・身体のメンテナンスが行われている。昼間体験したこと、覚えたことは睡眠中に整理され、記憶が固定される。睡眠時のさまざまなタイミングで筋肉をつくる成長ホルモンとか、眠りを促すメラトニン、ストレスに対抗するホルモンなどが分泌されるので、睡眠不足や不規則な睡眠が多くなると、その機能がうまく作動しにくくなる。

 寝る時間が遅くなると、「自分のことが好き」という自己肯定感が低く、気分を安定させる機能が低下する。やる気を引き出し、強い心をつくるということでは、成長期の子供には十分な睡眠が必要だということになる。寝不足が続くと、不規則な睡眠に襲われ、夕方、部活後に寝込んだりして、夜寝る時に寝付かれなかったり、眠りが浅くなったりする。

 子供の睡眠負債をどのようにして防ぐのか。朝は朝日を浴び、朝食を取り、平日と土日の睡眠リズムをずらさない。就寝前の夜食は控え、そろそろ、寝る時間よ、と声を掛ける。電灯を白色の蛍光灯よりも、暖色系に替え、布団の中でデジタル機器(スマホを使ってのSNSやネット使用)を使わない。