学校で動物を飼う意味とは?

相模女子大学小学部教諭・三橋正英氏

 「動物飼育を通して生命を実感させ、情愛豊かな子供を育てたい」という趣旨で行われている全国学校飼育動物研究大会が第20回を迎えた。「学校で動物を飼うことの意味を改めて考える」と題して、このほど東京都文京区の東京大学弥生講堂で大会が行われた。相模女子大学小学部教諭の三橋正英氏は持続・継続可能な飼育にどう取り組めばよいのか提案した。

自宅に持ち帰り親子で世話も、出産や孵化を通じ命を考える

学校で動物を飼う意味とは?

相模女子大学小学部教諭・三橋正英氏

 相模女子大学小学部は神奈川県相模原市にあり、児童数444人(男子148人、女子296人)。玄関前に1991年から飼育を始めたヤギ小屋があり、全校の児童・生徒の目に触れることができるようにしている。2014年から飼育を始めたモルモットは1年、2年にまたがって各クラス1匹、飼育をしている。

 ヤギの飼育は総合学習の導入で、家庭では飼えない大きな動物を飼ってみたいという希望から候補に浮上した。動物園や牧場で触れる機会もあるが、小学部で学ぶ全ての子供たちに「動物を慈しむ優しい心をはぐくんでほしい」「生命の大切さに気付いてほしい」というレベルになるには飼育体験を継続するしかない。

 モルモットの飼育は前年の10月から今年の10月まで2年生が飼育、10月からは1年生に引き継ぐという繰り返しになっている。引き継ぎの時、異学年交流があり、責任ある指導なども経験する。掃除は1週間ごとに4~5人の班に分かれて行う。休日には希望者を募り、当番で自宅に持ち帰り、親子で世話し、観察日記を付ける。家族の交流、話題の中心にもなる。獣医師や先行実践校の先生と連絡を取りながら飼育を続けている。

 飼育は児童が動物に対する愛着を培い、飼育日誌などを通じて具体的文書で表現する力を育てることができる。一緒に遊んだり、触れ合うことで愛着を形成することでグループ内で話し合い仲間意識が育つ。カリキュラムに位置付けられると、全員が関わることになり、教育効果が得られやすい。

 命を見詰めるという意味では、これまで、ヤギとの死別を3回経験している。事故であったり、ビニールを食べてしまったり、冬の寒さに耐えられなかったり、老衰のケースもあった。13年間飼ったミルクというヤギが老衰死した。寄り掛かっても暴れたりせず、年を取って、温厚で子供たちの人気者で心のよりどころだった。ミルクが死んだのは、2学期の始業式の翌日で、児童たちがお別れの会を企画し、動物の葬儀を扱う会社にお願いし、火葬、骨を返却してもらい、構内の木の根元に埋める樹木葬を行った。

 保護者にもアンケートを取った。77家庭が返答をくれた。動物を飼育しているのは22家庭。犬とか猫を飼うとなると、少なくなる。アパートなどで飼育が禁止されているケースや、アレルギーを持っている家族がいる、感染症が心配、乳児や新生児がいるため、飼えないという家庭もある。

 アンケートの内容を読むと、可能なら、動物と関わって、言葉では言い表せない、心情豊かな子供に育ってほしいと考えている保護者が多い。動物飼育で学べることも多く、動物の誕生日会をしたり、出産や産卵・孵化(ふか)の体験を通して命を考えるということにもつながる。