学校で動物を飼う意味とは?
文部科学省教科調査官・渋谷一典氏
「動物飼育を通して生命を実感させ、情愛豊かな子供を育てたい」という趣旨で行われている全国学校飼育動物研究大会が第20回を迎えた。「学校で動物を飼うことの意味を改めて考える」と題して、このほど東京都文京区の東京大学弥生講堂で大会が行われた。渋谷一典氏は文部科学省教科調査官の立場から学習指導要領の中での学校飼育動物について、どのように取り組んでいけばよいかについて語った。
生命の尊さと大切さを学ぶ、生活科以外の教科と連携を
平成28年に改定された学習指導要領に「生命の尊重に関する教育(現代的な諸課題に関する教科等横断的な教育内容)が書かれている。「総則」の中に、何をに当たる「生命の有限性や自然の大切さ、主体的に挑戦してみる。多様な他者と協働すること」とある。どうするに当たる所に「実感しながら理解する」がある、そして各教科の特質に応じて、どのようにするかについて「体験活動を重視、家庭や地域と連携、体系的・継続的に実施」することを謳(うた)っている。
生命の尊重に関する教育において、教科等の横断的な教育内容として、1,2年生の生活科では、動物を飼ったり植物を育てたりする活動を通して、それらの育つ場所、変化や成長の様子に関心を持っていることや成長していることに気付くと共に、生き物への親しみを持ち、大切にしようとする心を育んでいく。
学習指導要領の中で、理科においては、3年生で身の回りの生物、4年生で季節と生物、5年生で動物の誕生、6年生で生物と環境について学ぶ。特別な教科道徳では、身近な自然に親しみ、動植物に優しい心で接する。生命の尊さに関して、生きることの素晴らしさを知り、生命を大切にする、生命の尊さを知り、生命あるものを大切にする。多くのつながりの中にある、かけがえのないことを理解し、生命を尊重する、などを学ぶと書かれており、これに基づいて指導が行われる。
埼玉県のある学校で、小学校1年、2年で、生活科の一環としてウサギを教室で飼っていた。2年生の終わりに、飼っていたウサギをどうするか、「クラス替え後の3年生でも継続して飼う」「1年生に譲る」「元居たウサギ小屋に返す」の3候補の意見で投票・討論を行った。一生懸命飼育してきた児童たちは、真剣に討論、それぞれの意見ともストレスになるのでは、ということで、なかなか結論が出なかった。生命ある動物を最期まで飼うことの難しさ、大変さは児童たちの心に残った。
動物飼育を体系的・継続的に推進することは、学校の教育課程の中でしっかりと、取り込むことが大事だ。軸のしっかりした学校教育がなされることが、個人の資質能力を高めるために必須のことと考えている。また、他教科との連携も必要だ。動物を世話し、育てていくと、しっかりした観察力が身に付く。図工において、粘土で動物を作製したり、絵に描いたり、国語の時間で紹介文を作成したり、動物の動きを音楽やダンスで表現したり、体重を測って数学や理科の勉強に展開できる。委員会活動で動物と触れ合うイベント企画なども行える。






