スマホから離れて夏休みを楽しもう

千葉大学大学院教授 木下 勇 氏

“危険を伴う”で子供は成長

 シンポジウム「スマホから離れて、夏休みを楽しもう」がこのほど、東京・本駒込の日本医師会会館大講堂で行われた。千葉大学大学院教授・こども環境学会副会長の木下勇氏は「スマホやゲームの代替となる遊びの提案~ゲーム・スマホよりも、子どもたちがわくわくする体験は?~」と題して、世田谷の羽根木プレーパークを例に、生きる力を育てる場の提供について提案した。

大人もワクワクする遊びを紹介

スマホから離れて夏休みを楽しもう

千葉大学大学院教授・こども環境学会副会長 木下勇氏

 世田谷の羽根木プレーパークは子供が木登りしたり、走り回ったり、日本で最初に作られた、常設の冒険遊び場。大村虔一・璋子夫妻の呼ひ掛けで始まり、1979(昭和54)年、世田谷区が国際児童年の記念行事として作ったもの。プレーパークは先進的な取り組みが注目され、東京で60余、日本全国で約400カ所くらいある(2016年段階)。

 「高さを体験する巨木登り」「速いスピードのあるブランコ、滑り台など」「危険そうなナイフ・弓矢などの道具遊び」「火・水たまりなど危険な要素を含んだ遊び」「川の土手などで荒い転落」「パッと消える・隠れる鬼ごっこ」などが可能だ。これらの自由な「遊び」によって子供たちに、自主性や主体性、社会性やコミュニケーション能力を育んでもらいたいと願っている。

 引率して来た父母も、子供時代を思い出して、一緒に泥だらけになって遊びだす。小さな幼児の遊び体験も一緒にやっている。年齢に応じて、危険に応じて、指導員、監督者が見守る。

 最近、都市公園では「遊んで大声出すと怒られる」「ボール遊び禁止、バットを振り回すのはもってのほか」「サッカーも、小さな子供に当たると、けがする」と禁止事項だらけで、子供にとって、魅力がなく、自由に遊べる場所は減少するばかりだ。

 心理学者のピーター・グレイ氏は「子供は危険を伴う遊びによって心理的にも強靭(きょうじん)さを自然と身に付ける」と語っている。また、ティム・ビルというイギリスの学者は「過保護でなく、野に放つ必要性」を訴える。野山で駆け回った世代の方が、災害時に生き残る、たくましさを持っているという。

 支援のボランティアは単なる“遊ばせ屋”というだけではない。子供たちが自ら動きだすことができるような環境を整え、促すような仕掛けをしたり、子供同士の関係づくりにも気を配る。知識・技術を習得して、遊具の安全性も確認できるようなメンバーがボランティアとして集う。子供の話を聞いてあげられる能力が重要。世話人会で子供の状況などを把握し、共有しながら、活動している。

 40~50年前だったら、親が何もしなくても、地域社会が、いろいろ子供の面倒を見てくれたり、悪い事をすれば、叱ってくれるおじさん、おばさんがいた。今は、そんなことをすると、警察に通報されたり、訴えられることになる。社会全体の「子供の教育力」が衰退している。では、どうやったら、回復できるか。子供の遊びにおいて、自分でできることは自分でやらせ、できないことがあれば手伝う。