子供の養育環境改善


 先日、机まわりの資料を整理していると、昔の雑誌が出てきた。買ったことも忘れていたが、9年前の『週刊ダイヤモンド』(2009年7月25日号)だ。

 この号の特集は「子ども危機―この国で産み育てるリスク」。子供をめぐる五つの危機として、「ネット、携帯の危険」「学習意欲の低下」「保育園不足など貧弱な子育て環境」「産科・小児科医療」「子どもの貧困」を取り上げている。まだスマートフォンが普及する前だが、小学生のケータイ依存や児童ポルノなどにも触れ、「子育てをめぐる環境は、世界2位の経済大国とは思えないほど脆弱だ」と警鐘を鳴らしていた。

 子供の養育環境の改善は、この10年余りの間も行われてきたと思う。それでも児童虐待をはじめ、ネット依存など深刻化している課題が多いことを改めて考えさせられる。

 昨年5月には日本学術会議が「我が国の子どもの成育環境の改善に向けて」というタイトルで、成育コミュニティーに焦点を当てた提言を発表している。国レベルの政策として、異年齢の子供同士の交流や大人に見守られる社会的環境の整備、子供の貧困対策、過度なメディア接触の対策、いじめ・不登校・虐待・犯罪を防ぐ社会的取り組みの強化などを推進するよう訴えている。また、保育士など子供に関わる専門家の確保も求めている。

 地域の絆がなくなっているとも言われるが、筆者の地域にはPTA活動に熱心に取り組む保護者や、子供たちの登下校の見守りを毎日行う地域の高齢者もいる。

 日本学術会議の提言は「子どもの目線に立って、子どもを第一とする国民運動を展開する必要がある」と書いている。ただ、一部の人やメディアが声高に主張する「子供の人権を守る」だけでは十分ではないだろう。大多数の国民が抱いているだろう「子供たちのために何かしたい」という思いを率直に行動に表せる社会を考えたい。(誠)