トランプ氏、中絶への公的資金停止
米コラムニスト マーク・ティーセン
保守派キリスト教徒が支持
民主党は強く反発
トランプ大統領に批判的な人々は、トランプ氏が先週、犯罪組織MS13を「動物」と呼んだことに激しく反発した。もちろん、誰であれ非人間的な扱いをするのはよくない。だが、トランプ氏を非難しておきながら、無辜(むこ)の胎児を非人間的に扱うことには問題を感じないようだ。
トランプ氏は、これまでのどの大統領よりも胎児の人間性を大切にする大統領になった。これこそが、保守派キリスト教徒の多くがトランプ氏を支持する理由だ。トランプ氏は22日夜、非営利組織スーザン・B・アンソニー・リストの毎年のイベント「命のための運動」で、大喝采で迎えられた。26年の歴史を持つこの素晴らしい組織で演説する最初の大統領になっただけでなく、その場で、さらに中絶反対への約束を表明した。共和党の歴代大統領でも果たせなかった約束だ。「タイトルX」家族計画プログラムを通じて中絶に間接的に公的資金が投入されるのを停止する新規則を発表した。
◇中絶反対派の勝利
トランプ氏は「大統領選に出馬した時、命を守ることを誓った。大統領としてまさにこの誓いを実行した。きょう、もう一つの公約を守った。政府は、タイトルXによる資金が中絶を行ういかなるクリニックにも渡らないようにする新規則を提示した」と語った。
タイトルXの補助金を受け取るすべての団体は、家族計画活動と、中絶を実施または勧める計画や施設の間を物理的、資金的に明確に分離することを求められるようになる。連邦法は1976年以来、中絶への連邦予算の使用を禁止してきた。しかし、現在は、連邦家族計画予算を受け取っている家族計画連盟クリニックが、女性にその施設での中絶を勧めることがよく行われている。トランプ氏の「生命保護規則」で、これは禁止される。
生命保護規則は、米国の中絶反対派が30年間待ち望んできた勝利だ。レーガン大統領が1988年に最初にこの規則を発表した。しかし、中絶支持団体がこれに異議を唱え、法廷に持ち込んだ。ブッシュ(父)政権は最高裁まで戦い、勝利。最高裁は91年にラスト対サリバン裁判でレーガンの規則を支持した。ところが、判決が出るのが遅すぎた。その後すぐにクリントン大統領が就任し、この規則を撤回した。
ブッシュ(子)大統領は8年間の任期中、再導入することに失敗した。ホワイトハウスで私の仕事仲間だったユバル・レビン氏は最近、「(再導入の取り組みは)2006年春に、次官レベルの政策会合で放棄された。会合では、かなり激しい議論が戦わされていた」と記している。
トランプ政権では、会議で「激しい議論」が戦わされたり、連邦議会への影響を懸念したりということはなかったようだ。とにかく実行した。この命の問題に向かう勇気に、保守派キリスト教徒らは喜び、トランプ氏への忠誠を強めた。
◇子供は神の贈り物
左派は当然、怒っている。民主党のファインスタイン上院議員は「卑劣」と言い、ニューヨーク・タイムズ紙は社説で、この規則によって家族計画連盟のような団体は大きな打撃を受ける可能性があると主張した。だが、これは言いすぎだ。家族計画連盟は連邦補助金の4分の3をメディケイド(低所得者向け公的医療保険)を通じて受け取っている。この部分に影響はない。それでも、中絶反対派にとっては気持ちのいいものだ。民主党員らの怒りにもかかわらず、この新規則は国民の強い支持を受けている。1月に公表されたマリスト世論調査研究所の調査によると、米国民の60%が中絶に税金を使用することに反対、賛成は36%だった。
トランプ氏は就任後、税金が無辜の命を奪うことに使用されないよう数々の措置を取ってきた。就任1年目に任命した保守派判事の数は過去最多、州が家族計画連盟への資金援助を停止することを認め、中絶支持の国連人口基金(UNFPA)への資金拠出を停止、海外で中絶を行う団体への資金援助を禁止する「メキシコ市政策」を拡大、オバマケアによる中絶薬の提供に倫理的な理由から反対する団体の提供義務を免除した。スーザン・B・アンソニー・リストのマージョリー・ダネンフェルザー代表は22日、「米国史上最も強く中絶に反対した大統領」と述べた。
トランプ氏は22日夜、「命はすべて貴い。…子供はすべて、神からの貴い贈り物だ。すべての命に意味があり、すべて命は完全に守られるべきだ」と訴えた。トランプ氏は、これらの命を守るために全力を投入している。中絶に反対する保守派がトランプ氏を支持するのはそのためだ。
(5月23日)