博士卒人材を守れ


 大学法人化以降、大学の交付金が1割以上も削減する中、若手研究者の研究環境は厳しいものがある。

 科学技術・学術政策研究所が公表した「博士人材追跡調査」第2次報告によると、大学院生の2人に1人が週10時間以上のアルバイトに追われ、ダブルワークが当たり前というのが現状のようだ。

 同調査によれば、2015年度博士課程卒者で修了時に借入金がある学生は6割。うち4割は300万円以上の借入金がある。正規雇用であれば問題ないが、博士課程卒者で年収300万円未満が約2割。この10年で若手研究者の任期付きの非正規雇用が4割から6割に増えている。同年代の男性労働者の非正規雇用率10~15%を大きく上回っている。

 科学雑誌『NATURE』に掲載された論文数をみると、主要先進7カ国では唯一日本だけが減少している。最新の2018年版「THE世界大学ランキング」では、東大が46位、京大は74位に大きく後退した。

 ランキングに一喜一憂すべきではないが、今のままでは浮上はしない。東大はじめ日本のトップ大学は、英語による授業や留学生・外国人教員比率を上げることで、ランキングアップを図ろうとしているが、これで日本の優位性を示せるとは思えない。

 オックスフォード大学の苅谷剛彦教授によれば、世界大学ランキングトップのオックスフォードは収入の4割が外部からの研究資金で、寄付金総額は東大の約6倍に上るという(『Wedge』2017年12月号)。

 欧米と違って日本は民間等の外部から資金調達が弱い。国の財源に限りがある中、少子化で大学運営はますます厳しさを増す。大学教育無償化の議論もいいが、まず研究と教育の質を上げることが先決だ。博士卒者のフリーターを増やす社会では日本が生きる道がない。(光)