子供発達の視点で虐待予防を
先日、児童保護・養育者支援に関するシンポジウムがあり、米英仏と韓国の児童虐待の実情と法制度について知る機会があった。
近年、韓国では衝撃的な児童虐待死亡事件が続いている。警察による通報件数は5年間で2倍。離婚率も急上昇しており、家庭の危機は深刻だ。
急増する虐待に対して、韓国は2014年「児童虐待犯罪の処罰等に関する特例法」を設け、処罰規定を強化させた。ただ家父長的な男尊女卑の考え方が根深く、しつけと称した体罰や暴力など、不適切な養育が虐待を生んでいる場合が多い。施行後も虐待被害は増え続けている。
各国は司法の関与を強化し、家族への積極的介入を進める一方、近年対策の中心は予防教育に移ってきている。シンポジウムでは、多様な視点で児童保護に取り組むドイツの法制度に注目が集まった。
司法の関与に加え、虐待予防を目的に一般家庭への啓蒙(けいもう)や教育相談、さらに虐待の危険をはらむ特定家庭に教育援助を行うなど、予防教育に力を入れている。特に妊娠初期から生後3歳まで、愛着形成という観点から親と子に対する早期援助の取り組みは興味深いものがあった。
韓国の例を見ても、罰則強化だけで問題解決は難しい。なぜなら、虐待は世代間で連鎖する可能性が高いからだ。虐待の連鎖を断つには、すべての子供の発達を保障するという視点が何より大事だ。
日本は今回の制度改正により、施設から家庭で代替養育をする方向に大きく方針転換した。5年以内に乳児院をなくす方向だ。
また虐待に至らずとも、体罰、スマホ育児など、不適切な養育を行っている場合がある。家庭や保育園、子供が育つ成育環境全般にわたって、児童保護と子供発達の視点で見直していくことが大切で、広い意味での虐待予防につながる。(光)