現役教師が井の頭池の現状学ぶ

水生物館飼育展示係・木船氏がレクチャー

 4月から教壇に立ち始めたばかりの若手から、数十年教壇に立ち続けてきたベテランまで男女16人の現役教師が、井の頭自然文化園のセミナー室に集った。集った教師の専門科目は理科だけでなく、数学、音楽、図工と、さまざまだが、「現状を知って、教壇に立ちたい」という意欲は同じ。小学校6年生の理科「生物のくらしと環境」の単元で扱える教材として、湧水が減少、外来種が増殖、水質が悪化する井の頭池の昔と今、「かいほり」の成果などについて、井の頭自然文化園水生物館飼育展示係の木船崇司さんのレクチャーに耳を傾けた。

「かいほり」で固有種回復へ

現役教師が井の頭池の現状学ぶ

飼育展示係の船木崇司氏(背中)のレクチャーに耳を傾ける来場者

 パワーポイントを使い写真や図を使って木船さんが説明。井の頭池は豊かな湧水を誇っていた。また、井の頭池(広さ約4・2ヘクタール、深さ平均1・5メートル)の水質汚染も問題となっている。井の頭池はかつて1日1万トン(大正時代には3万トン)あった湧水が、周辺の市街地化と上水用の地下水汲み上げにより激減し、最近ではほとんど無くなった。1960年代から濁り始め、池底がほとんど見えなくなった。井の頭池にすむコイやカルガモなどのエサとしてスナック菓子やパンの切れ端、弁当の残りなどを池に投げ与えることも水質汚染の一つの原因に挙げられる。

 2017年5月に開園100周年を迎えた井の頭恩賜公園。その記念行事で「かいほり」を実施している。1回目は14年1月から3月、お茶の水池とボート池。2回目が15年11月から16年3月で井の頭池全域で行った。3回目は17年度中に井の頭池全域で実施する予定。

 「かいほり」は従来、農地等のため池で、農閑期に水を抜き、コイ、フナなどの魚を捕獲したり、護岸の補修や点検等を行ってきた。これらは、ため池の機能を維持するために欠かせない管理作業の一つだ。近年では、都市部の公園池などで、自然の浄化能力を活用した水質改善や、外来生物を駆除し、生態系の回復を目指した「かいぼり」が行われている。

 1、2回の「かいほり」実施で分かったことは、池の透明度が高くなり、時々、底が見えるようになった。無くなったと思われた湧水が池の数カ所で見つかった。イノカイラフラスコモなど希少な水草が60年ぶりに確認できた。保護した生き物ではモツゴやハゼ類などが繁殖した。その一方で、オオクチバスは減少したものの、駆除したはずのブルーギルは取り残した個体が繁殖、駆除の難しいアメリカザリガニが増えた。

 木船さんのレクチャーの後、参加者は会場後方に設置されたミニ水族館の「アメリカザリガニ」「テナガエビ」「モツゴ」「メダカ」などの展示に見入った。