憲法の不用意も是正を


 法の下の平等は憲法を学ぶ際に真っ先に学ぶ。それに反する「1票の格差」を是正するということで、昨年夏の参院選では徳島・高知、鳥取・島根の二つの合区を含む「10増10減」の制度改革が行われたが、それでも一票の格差は最大で3・08倍。これでは「法の下の平等」や憲法が求める“正当な選挙”は実現していないと、二つの弁護士グループが全国14の高裁・高裁支部に計16件の違憲・選挙無効訴訟を起こし、合憲6、違憲状態10、違憲0となり、上告審も最高裁大法廷で7月19日に結審し今年秋にも判決が言い渡される。

 一方、衆議院でも「1票の格差」を是正するため、実に19都道府県で計97選挙区の区割りを見直す「0増6減」(このほか比例代表4ブロックの定数1ずつ削減し全体で0増10減)の改正公職選挙法が先の通常国会で成立。2020年の推計人口を基準にした格差が1・999倍になるが、有力な後援会の基盤が他の選挙区に移るなど波紋が広がっている。衆院では20年の国勢調査後に人口比をよりはっきり反映させる「アダムズ方式」を導入するため再び大規模な区割改定が行われる見通しだ。

 衆参両院での一票の格差是正が大きく動き始めたのは最高裁が09年以降3回の衆院選と10年以降2回の参院選をいずれも違憲状態だと判断したため。それでも弁護士グループは満足せず、一票の格差という不条理を解消する完全な人口比例選挙の実現を目指している。

 しかし、衆参両院が共に完全な人口比例選挙になる場合、今でも曖昧な参院の存在意義はさらに薄れる。都道府県や市町村の行政単位の意味も、ますます揺らいでしまう。これらの問題は占領下の憲法制定の際に十分な検討もなく決定されたことに根本の原因がある。法律家として憲法を尺度とした現実の不合理の是正は大切だろうが、憲法自体の不用意の是正にももっと情熱を注いでほしいものだ。(武)