英語の4技能は必要か?
2020年度から小学校の英語が教科となる。3、4年生は年35コマ、5、6年生は年70コマに倍増する。大学入試センター試験も変わる。2020年度から、いよいよ「読む」「書く」「話す」「聞く」の4技能評価が導入される。
オリンピック効果で英語熱は高まる一方だが、国立教育政策研究所が行った6年間の「外国語活動」に関する調査では、コミュニケーション能力の向上など良い変化もある一方、小6の約3割が「英語嫌い」になっていると指摘している。小学校で英語嫌いになったら、中学以降、もっと英語嫌いになる可能性がある。
先日、科学ジャーナリストの松尾義之氏の話を聞く機会があった。日本は江戸・明治期から難解な科学用語を日本語に翻訳し、母国語の日本語で科学を学ぶ環境が整っていたから、ノーベル賞級の発明発見が生まれたと話していた。今世紀の科学分野の日本人ノーベル賞受賞者を見ても、意外にも英語を早くから学んだ人は少ない。ノーベル賞の受賞式で日本語でスピーチした益川敏英博士の話は有名だが、赤崎勇博士、天野浩博士、中村修二博士も留学経験はなく日本語で科学を勉強している。大村智博士は英語をあまり勉強しなかったと聞いた。
松尾氏は最近のネイチャー誌などを読むと、欧米からの論文は平板なものが多いが、日本人の論文は間違いなく質が高く面白いと言う。つまり日本語で考えることが重要というわけだ。
インターネット社会は仕事をする時に、「話す・聞く」よりむしろ「読み・書き」能力を必要とする。大学で英語による授業を受けた学生の学力低下さえ指摘される中、英語の4技能をバランス良く伸ばすことが、本当に日本人に必要なのか。
来年度から移行措置として、総合学習の時間を英語に振り替えるという。小学生英語の教科化は何か日本人の劣化政策ではないかと思えてくる。(光)