天笠茂・千葉大学教育学部特任教授の講演
より良い授業の実現に向けて
教職員全員が運営参加の意識を
講演の最初に天笠茂特任教授は「学力とは何か、10人いれば、10通りの学力に対する考え方がある。教科書が薄くなって教える総量が少なくなったとか、経済協力開発機構(OECD)による学習到達度調査(PISA)で各国の読解力と開きがあったとか言われている。下がったのは、問題の回答の技術的なものだとか、さまざまな捉え方の人がいる。率直に、学力の状態を認識することが必要だと考えている。テスト結果で一喜一憂するのではなく、本質的な問題として『読む、書く』などの読解力は時代にかかわらず、世界に出て行っても必要なことなので強化する必要がある」と語った。
子供たちに「面白い」「ああ、なるほど、こういう考えか」と思ってもらえるような授業にすることが「主体的」「対話的」「深い」学び(アクティブ・ラーニング)の考えに沿った授業となる。対話をして、グループ活動で討論させていればよいというものではない。方法論とか、技術論のように捉えてはいけない。教える側に立てば「子供に、どう力を付けさせたらよいのか」と考える必要がある。「深い学び」は基礎的知識が無ければ発展的学習や討論など考える行動に移れない。
前の学習指導要領では言語活動(思考・判断・表現など)の充実は道半ば、と受け止めている。「国語で培った力を算数・数学で生かす」「社会科とか理科の力がいまひとつ、という時、ノートのまとめ方が良くない」というケースがある。算数・数学でも、社会・理科とか、国語科が中心的な役割を担う。国語で培った力を算数・数学で生かす。教科ごとではなく、読解力、良いノートを作るという視点を持って、各教科がどういう役割をしているか考え、実行するというのが、横串を刺す・教科横断ということ。
環境教育、キャリア教育、情報教育、防災教育などはどの教科にも入っておらず、特定し切れない。個々の問題に対応する時間が取れていなくても、各教科の単元の中に含まれているケースが多い。国語の中や社会の授業の中に、単元のレベルにバラしてみれば、教科の内容に含まれていることも多くある。家庭の保護者や地域(町内会活動)の人たちにも関わってもらい、学校や教科を超えて教えるケースがあってもよい。
「計画を立て」「実践して」「評価を加えて」「改善計画を開示する」というPDCAサイクルは学校全体の「見取り図」があって、初めて有効となる。小さなくくりで言えば教師が行う1時間の授業、それを年間で、他の教科と、全学年で、学校全体でと連携を持ち、一番大きなくくりが「カリキュラム評価と学校評価」となる。校長がリーダーシップを取って、これを連動させ、しっかりした組織として対応しないと、せっかくの現場の先生方の努力が浮遊してしまうことになる。
「自分たちで自分たちの学校を改革・改善していこうという心持ちの基盤があって、カリキュラムマネジメントが手法・手段として生きる。教職員一人ひとりが学校運営に参加・参画し、どこで、どのようにと考え、関わることが必要」
天笠特任教授が今後、重要になってくるポイントで講演を締めくくった。