神話や昔話を子供に教える
先日、ある道徳教育のシンポジウムに参加した。道徳の教科化が小学校で平成30年度、中学校ではその翌年から正式にスタートする。会合では現場の教師の方々が試行錯誤を続けている様子がうかがえた。
その中で「神話や昔話を教えたい」という意見が出て、他の教師も賛同していたのが印象的だった。参加していた保護者の一人も「良いと思う。この前、桃太郎も知らない子がいて驚いた」と話していた。
筆者は親から昔話を聞かされた記憶はあまりないが、本を読んで自然に覚えていった。今は本を読む時間も親子の会話も減り、幼稚園や保育園で取り上げる機会も少なくなったということか。
神話や昔話は長い歴史の中で受け継がれ、大切にされてきたもの。学習指導要領では、伝統的な言語文化を教えたり(国語)、昔の人々の信仰やものの見方に気付かせる(社会)という目的の中で、神話や昔話を取り上げる。道徳授業で取り上げる場合は、その中に込められた道徳的価値や伝統文化、国を愛する態度を伝えることになるのだろう。
ちなみに、アメリカでは1990年代、『ブック・オブ・ヴァーチュー』(邦題『魔法の糸』)という本がベストセラーになった。ギリシャ神話やイソップ物語、偉人のエピソードを、「責任感」「友情」「勇気」「忍耐」「正直」「信仰心」などテーマ別にまとめたもので、第二の聖書と言われるほど各家庭に普及している。
また、現在参議院議員の青山繁晴氏は「神話は、その民族の秘めた哲学、理念を指し示している。ほんとうは…世界の民族がそれぞれ育んだ神話をおたがいに尊重することが、いちばん、戦争から遠い」(『ぼくらの祖国』扶桑社)と、神話や昔話が持つ力について述べている。(誠)