本当の「こどもまんなか」政策とは
岸田内閣は「こどもまんなか」社会の実現を看板の一つにしている。岸田総理は今月17日の施政方針演説で、「こども政策をわが国社会のど真ん中に据えていくため、『こども家庭庁』を創設する」と述べた。
生まれた子供たちを大切に育てるという取り組みには、もちろん異論はない。ただ、ここ数年の政策を見ると、気になることも幾つかある。
一つは、以前取材をさせていただいた松居和さん(音楽家・元埼玉県教育委員長)の話から考えさせられた保育政策の問題である。
松居さんは長年アメリカで生活していたが、アメリカ社会の深刻な家庭崩壊に直面し、日本でも同じことが起きると警鐘を鳴らしてきた。また、全国の保育園や幼稚園を回りながら、保育崩壊の危機を訴えている。
今月刊行された著書『ママがいい!』で松居さんは、「エンゼルプラン」や「子育て安心プラン」「待機児童ゼロ」など近年の保育政策によって保育がビジネス化され、11時間の長時間保育を進め、保護者が親として育つ機会を奪って母親をパワーゲームに引き込んだと述べている。何より子供の最善の利益より「市場」を優先した労働政策になっていると批判する。しかも親を支えて一緒に子供を育てようという責任感を持った保育士が疲弊し、辞めていく事態も起きている。
松居さんは以前、幼児たちは社会に人間性を満たし、心を一つにする、笑顔で人を幸せにすると語っていた。また、宇宙は乳児という絶対的弱者を人類に与え続け、人類は乳児に自分の自由をささげることで幸せを感じてきたとも述べていた。それこそ親心が育つ喜びだが、人類が歴史的に受け継いできたシステムが崩れているというわけだ。
保育政策が肝心の子供を置き去りにしているとすれば、それを改善し、親子の絆と親心を育てていくことこそ、本当の「こどもまんなか」政策になるのではないか。(誠)