有識者会議ヒアリング、こども庁より子供予算を


 こども庁創設に向けて子供政策の見直しを検討する政府の有識者会議の4回のヒアリングがほぼ終わった。議論は虐待、不登校、子供の貧困など、多岐にわたった。子供支援の実践者によるプレゼンで興味深かったのは佐賀県の認定NPO法人スチューデント・サポート・フェイスのアウトリーチ型支援の取り組みである。

 法人代表の谷口仁史氏は従来型の個人に対するカウンセリングによる支援だけでは難しいと考え、アウトリーチ型支援の不登校、引きこもり支援に取り組んだところ、9割以上が学校復帰、引きこもりや進学・就職等が改善したという。学習支援員による家庭訪問回数は1万1000回に及ぶ。

 また県内全公立高校を学校訪問し、中退リスクが高い生徒の家庭教師派遣を行うなど、小・中・高校と切れ目ない包括的な訪問支援事業を展開している。高い改善実績に期待し、教職員等から依頼がNPO法人に急増しているという。

 有識者会議のヒアリングでは「こども庁をつくれば、子供が救われるわけではない」と、当事者に寄り添う「伴走型」支援の重要性を訴える意見もあった。

 児童の権利条約批准25年をきっかけに、こども庁や子ども基本法制定の動きが活発化している。ただ、法や制度をつくっても、現場でうまく機能しなければ制度倒れに終わる。2016年改正児童福祉法に「家庭養育の原則」が明記されたものの、里親委託率は数値目標に程遠い。また一時保護や児童養護施設入所児童の状況もそれほど改善されていない。

 その理由は児童福祉に携わる専門人材が欧米と比べて圧倒的に少ないからである。谷口氏は支援の成否を決めるのは「人」であると、「戦略的人材育成」の必要性を強く訴えている。

 まずは対GDP比家族関係社会支出費を先進諸国並みにするなど、「こども庁」の前に国や行政がやるべきことはもっとある。(光)