秋田市、フレイル予防で健康長寿の街づくり
東大高齢社会総研と協定、「フレイル予防講演会」を開催
「命が尽きる直前まで身体も心も元気に過ごしたい」と誰もが願う。近年「フレイル予防」が広がっている。秋田市でも本格的な取り組みがスタートした。
フレイルとは、要介護状態に至る手前の段階で、年を取って筋力や認知機能、社会とのつながりなど心身の活力が低下した状態を指す。そこから改善するのか、そのまま悪化していくのかで健康寿命が決まる。健康寿命とは、日常生活を支障なく送ることができる年齢だ。
50代半ばを超えると、誰しもが自分の老いを感じ始める。「運動をしなくっちゃ。規則正しく栄養価の高い食事を取らなくては」と誰でも思うが、日々の生活に追われ、がんや脳卒中、心臓病、認知症などに近づき、要介護になってしまう。そうならないように、今から生き方を変えて行こうというのが「フレイル予防」だ。
先日、秋田市で「フレイル予防講演会」が開かれた。講師は、東京大学高齢社会総合研究機構機構長の飯島勝矢教授である。コロナ禍のためオンラインでの講和だった。講演会の前に、市と同機構および秋田大学はフレイル予防に関する連携協定を締結した。同大学には飯島教授の教え子がいる。機構は9月末の段階で21都道府県74市区町村と同様の連携協定を結んでいる(令和3~4年度は20自治体が導入検討・予定)。
予防の要は、市民と行政、医師などの専門職員が一体となって実施していくフレイルサポーター制度だ。サポーターも含め高齢者同士でワイワイ、ガヤガヤ、語りながら自分の状態を自覚することから始まる。
生活習慣を調査、栄養・身体活動・社会参加の3項目
講演会の会場では、簡易チェック表へのシール貼りが行われた。大きな項目は、栄養(食・口腔機能)、身体活動、社会参加の三つ。例えば「栄養」では、ほぼ同じ年齢の同性と比較して健康に気を付けた食事を心がけていますか、「運動」では1回30分以上の汗をかく運動を週2日以上、1年以上実施していますか――などだ。「はい」なら青シール、「いいえ」なら赤シールを貼る。上記3項目を立体的に意識することが大切だという。
飯島教授は約20年間にわたり各地で大規模調査を行い、人間はどのように弱っていくかを研究した。結論は、25%は遺伝的要因だが、75%は自分で管理可能なものだった。そして「人々に常識的な話を語っても全く効果がない」ことが判明した。ところが「高齢期で2週間寝たきりになると、7年間かけて作り上げた筋肉を失う」と言えば人々は納得する。
そこで飯島教授が作り出したのが、同世代同士によるフレイルチェック。その一環が前述のチェック表への記入である。
「シールが真っ赤の人もすくい上げていく」と飯島教授は強調する。全ての項目が青の人もいれば、赤の人もいる。その現実を自分のものとして受け止め、一つでも赤が青になるように日々改善する意識改革が本人の健康寿命を伸ばす。半年単位の定期チェックがお勧め。目標は、高齢住民主体の健康長寿まちづくりだ。
「40歳くらいから筋肉は1年間に1%ほど減っていく」「むせる人は、同年代なら4年後には2倍亡くなっている」と飯島教授。「ウオーキングは、ふくらはぎを鍛えるだけ。太ももはスクワットがいい。手すりに掴(つか)まっても階段上りは効果がある」とも。また友達や仲間・家族との散歩や食事、文化・地域活動もお勧めだ。
秋田市では11月からまず20人のフレイルサポーターを養成し、体組成や認知・運動機能の測定、チェックシート体験、結果説明などに慣れてもらい、その後は地域の集まりなどで広めていく。秋田県の健康寿命は2016年時点で全国最下位。1位の栃木県とはちょうど2歳の差がある。この事業で、秋田市がどのような上昇曲線を描くか期待が膨らむ。
(伊藤志郎)