「飼ってよかった」と実感する動物飼育
西東京市立保谷第二小学校の前校長・神山繁樹氏が講演
「『飼ってよかった』と実感する動物飼育」をテーマに第23回全国学校飼育動物研究大会(主催・全国学校飼育動物研究会、鳩貝太郎会長)がこのほど、Zoomを使ったオンラインで行われた。西東京市立保谷第二小学校の前校長の神山繁樹氏は「学校・家庭・地域が協同・協働する学校飼育活動」と題して講演した。
学校・家庭・地域の協同・協働、信頼関係構築が不可欠
西東京市立保谷第二小学校(児童数430人、22学級)の前校長の神山繁樹氏は、表題の協同・協働について、同じと書く「協同」は同じ目標を持ち、「協働」は共に働き汗を流すという意味がある。コロナ禍で令和2年度は3月から6月まで、学校が臨時休業となり、動物飼育は厳しい環境に置かれた。学校・家庭・地域が協同・協働して教育活動に生かしていくにはどうすれば良いか、知恵を出し合い、汗を流しましょうということ。紹介する保谷第二小学校は、児童や保護者が動物の世話をするための登校ができなかった。3,4人の教職員による餌やり、飼育小屋の清掃が行われた。土曜・日曜は日ごろから学校行事の手伝い、登下校の見守りを行っている地域の住民の協力を得ながら、飼育活動が続けられた。開かれた学校教育を推進するためには、学校・家庭・地域の協同・協働社会の確立、信頼関係の構築が不可欠だ。
生命に向き合うのは大切な体験授業、獣医師の指導も必須
1年生、2年生の生活科の中で生き物に対する関心を持ち、親しみを持ってもらうこと。金魚、ザリガニ、カブトムシなどの生き物係、日直などの当番で世話をしている。3年生理科 教室には身の回りの生物との関わり、カブトムシ、クワガタ、チョウ、ヤゴなど昆虫の観察を行う。4年生理科 全校の動物飼育の代表として、活動を担っている。生命を見詰める最適な年齢だと考えている。動物の生活と環境整備する。5年生理科 メダカや金魚など、卵から育っていく様子を観察。6年生理科 生物と環境、人のつくりと働き――という形で授業が進められる。
4年生の学校動物飼育活動を紹介する。高学年生の準備段階として、全校児童が大切に動物の生命を守るという責任ある仕事を担っている。1年間を通してウサギやチャボなど動物の体調管理、餌の調節、小屋の衛生管理を行う。時に生命の誕生や死と向き合い、児童にとって大切な体験授業だ。年度が替わる時期に新4年生への引き継ぎ、仕事の実演が行われ、飼育する上で大切なこと、かわいらしさ、責任などを他人に伝えるという学習効果もある。
学校獣医師による指導も欠かせない。担当学年の担任にとって飼育の基本、緊急時の対応まで教えてもらい、安心して自信を持って、児童への「指導を行うことができる。動物の死と出会うことも多い。普段から一生懸命育てた動物が死を迎えた時、「自分の接し方が悪かった」「もっと面倒を見てあげれば」など反省や後悔を抱く児童が多い。これらに対しても、獣医師による専門的立場からの、優しく、厳かな話は児童や担当教員を頭だけで理解させるのではなく、心から納得させるものがある。
鳩貝太郎会長があいさつ、映像に優る動物との触れ合い
例年、東京大学弥生講堂(東京都文京区)で行っていた大会が、昨年は新型コロナ蔓延(まんえん)の影響で中止となった。今年は何としてもオンライン開催をしようと準備してきた。新型コロナはデルタ株が主流になっている。年少者、子供から親、親から子供という家庭内感染が増加、学校では子供たちへの感染を防止するためにさまざまな対策を取り、全教職員が勢いっぱい努力されている。
学校では「子供たちへの対応だけで、精いっぱい」「とても、動物飼育どころではない」という厳しい状況になっている。動物飼育するには、苦労も多いけれど、「かわいらしい動物との出会い、世話をして一緒に過ごせて良かった」と関係した教職員・児童・家庭のすべての人が実感できる飼育を目指したい。
文部科学省が2019年末に「GIGAスクール構想」を示したことから、国の方針として各学校での導入が急務となっている。これからの学校はデジタル化が進められる。しかし、映像を通した知識を得ることで、子供たちが何でも分かった気になってしまうことを心配している。
大人の都合で動物飼育を安易にやめてしまうのはいかがなものか。多くの人の協力によって、子供の問題解決能力を育む上で動物飼育は適している。動物飼育を通して子供たちに「優しさ」「思いやりの心」が育まれる。動物のことや生命の大切さと尊厳を学ぶことができる。







