休み明けに急増する10代の自殺、SOS発見へ
コロナ禍で増えるネット依存、SNSでの相談体制構築を
10代の自殺は長期休み明けに急増する傾向がある。厚生労働省は9月10~16日を「自殺予防週間」と位置付け、自殺対策のための啓発事業を展開していた。同省の「自殺の統計」によると、昨年の児童生徒の年間自殺者数は499人に上り、前年(399人)と比べて25・1%増となった。また、自殺原因の上位3項目は、「進路に関する悩み」「学業不振」「親子関係の不和」だった。
和歌山県で教育相談コーディネーターを務める公認心理士の藤田絵理子さんは、「コロナは社会全体の問題であり、大人も子供も逃げ場が無い状況だ。経済苦境により、家庭で子供に八つ当たりするケースも見られる」と解説する。ほかにも、大人は在宅時間が長くなったことで、これまで仕事に忙殺されて見えていなかった、子供たちの行動に気付きやすくなり、子供への叱責が増えたことは容易に想像できる。
仕事場や学校へ通う日常の変化により、親子関係の不和が深刻化し、子供にとって息抜きの場所であった学校や家庭が失われた。これらのストレス発散に子供が利用したのは「インターネット」である。長期休校による自由時間の増加と、保護者のリモートワークによる家庭ネット環境の充実が相まって、子供のネット利用時間が大幅に増えた。
今年発表された内閣府の「子供・若者白書」によると、20年度の「スマートフォン利用状況」は小学生53・1%(15年度19・4%)、中学生79・3%(42・7%)、高校生98%(92・3%)である。さらに、「ネット利用平均3時間以上」の割合は、小学生33・6%、中学生52%、高校生69・5%と全てのデータにおいて過去最多となった。
スマートフォンの利用時間増加に伴うネット依存は、生活の乱れや不眠を引き起こし、不登校やうつ病などの精神疾患にもつながる。昨年度、自殺児童の中で最も多かった「女子高校生」の自殺要因1位は、「うつ病、その他の精神疾患」であった。
不登校児を支援するNPO法人「全国不登校新聞」の石井志昂さんは、「子供の『学校へ行きたくない』という訴えは、命に関わるSOSだ。命を守るためにこの訴えを見逃さないでください」と8月に発表した。
国立成育医療研究センターの「第3回コロナ×こどもアンケート」の報告書によれば、「学校へ行きたくない」と答えた中高生(34・5%)に比べて、「学校に行きたくない様子を把握している」と答えた保護者は17・5%だった。この差は17ポイントもあり、子供の2人に1人がSOSを伝えられていないことが分かる。また、同アンケートでは、「複数の先生から必要以上に叱責を受けることが増えた」と子供から聞いたという声も上げられた。
社会全体の問題であるコロナ禍で苦しんでいるのは、子供だけではなかった。周囲の大人も頼ることのできない状況の中で活用できるのは「SNS」だ。文部科学省は、SNSを活用した相談体制の構築と拡大を急いでいる。同省はホームページで、チャット相談「生きづらびっと」など、複数団体のSNS相談先を紹介している。
ICT活用による早期発見は、地域の関係機関へつなげることができる。児童生徒のスマートフォン利用率増加を、悩み苦しむ児童たちが自ら声を上げられる好機と捉えて、今こそSNSの相談窓口を支援し、周知していくべきだ。