子育て受難の時代、親子ともに育つ契機に
長期にわたる行動自粛による生活環境の変化は、発達途上の子供の心身にさまざまな影響を与えている。日常的にマスク着用、給食時は会話をせず黙って食べる「黙食」、発声や歌の練習、身体接触のある運動がなくなるなど、子供にとって受難の年だったと言っていい。
文部科学省のまとめによると、昨年の小中高校生の自殺者は前年比4割増、479人と過去最多。特に高校女子は約2倍に激増した。また、全国各所の子供食堂が閉鎖となり、唯一の居場所を失った子供も多い。DV(ドメスティックバイオレンス)や児童虐待も過去最多となった。
児童虐待では子供の面前で家族が暴力を振るうなどの心理的虐待が7割を占める。身体的虐待やネグレクトと違って、心理的虐待の場合は命の危険につながるようなことがない。だから見逃されやすいが、子供の脳に与えるダメージの大きさは身体的虐待よりも大きいというのが、最新の脳研究で明らかになっている。
乳幼児期、脳の発達の早期に虐待等の不適切な環境に置かれると、脳が損傷され、その後の心身の発達に多大な影響を与える。統合失調症など精神疾患の8割近くは20代前半までに発症すると言われている。
先日、ある研究会で虐待などの不適切な環境で育った子供は、思春期が早く訪れるという話を講師の先生から伺い、大変驚いた。また脳が発達する乳幼児期の感受性期に子供に適切な養育環境を準備することで、思春期に発症する精神疾患を予防できる可能性があるということも伺った。
さまざまなデータを見ると子育てや子供の発達に関わる課題が顕著に現れた1年でもあった。コロナ後の子供たちがどういう育ちをしていくのか。心配は尽きない。この子育て受難の時代を深刻に受け止め、親が育ち、子供が育つ環境づくりに取り組む契機としたい。
(光)