「障害」と「障碍」、表記の違いと問題提起
東京五輪・パラリンピック開催を控え、メディアが障害者スポーツを紹介する機会が増えている。そこで気になるのが「障害」という表記だ。このほか、表記としては「障碍(がい)」「障がい」がある。
「害」という漢字は「被害」「公害」などに使われ、負のイメージが強い。このため、「障がい」と表記する地方自治体が増えてきた。その一方で、「障害」のままでいいという意見もある。この表記を使うことによって、社会に存在する障害に向き合うことになるからだという。
常用漢字表に基づき漢字を表記する新聞は「障害」を使うことが圧倒的に多いが、読売新聞は「障がい」「障碍」を使っている。「障碍」はもとは仏教用語。かつては「しょうげ」と読まれ、悟りを妨げるものを指していた。「障害」が使われるようになったのは戦後だ。
常用漢字表に「碍」を追加するかどうか検討していた文化審議会国語分科会の小委員会はこのほど、「社会で広く使われておらず、直ちに追加はしない」とする考え方をまとめた。常用漢字表の改定は使用実態を反映させるもので、問題提起が目的ではないという。新聞は問題提起も仕事の一つ。今後どう変わるか。
子供の頃、近所にYさんという女性がいた。知的障害のある大人だった。年齢はたぶん30代だったと思う。
筆者も含めた腕白小僧たちが鬼ごっこなどをしていると、「私も入れて」と、やって来て一緒に遊んだ。時にはからかわれることもあったが、怒ることを知らない人だった。
ある時、Yさんが突然姿を消した。いつものにこにこ顔を見ることができなくなって、筆者の心にぽっかり穴が空いた。親に聞くと、施設に入ったのだという。
私にとって、あのYさんは障害者でも障碍者でもなかった。今でもYさんでしかない。
(森)