ある企業戦士の臨死体験から得た利他の喜び
地域のネットワークづくりのために4年前から月1回の地域講座を主宰している。コロナの時世、自分の人生と宗教との関わりについて考えてみるのもいいだろうと、今回は「日本仏教について学ぶ」をテーマに、初のリモート講座となった。団塊世代を中心に常連さんを含めて15人ほどの集まりだ。
講座で知らない知識を得ることは喜びだが、一番は講義の後の茶話会である。今回は日本仏教がテーマだったこともあり、なかなか聞けない宗教体験談を聞くことができた。
その日、皆を驚かせたのは典型的な企業戦士だったA氏の臨死体験である。65歳の時、会議中にくも膜下出血で緊急入院し、大手術をした時のこと。
「明け方、ベッドで夢うつつの時に突然、『おまえはこれからどうするんだ』と尋ねる天の声に驚いて、『人の喜ぶことをします』と言ったら、目が覚めた。『あれは何だろう』と思っていたら、またくも膜下になった」
3カ月後に奇跡的に生還し、職場復帰を果たしたA氏は、神様のお導きか、ある所で「利他業」という生き方を教えられたという。
「自分ファーストはやめよう」と心に決め、「刺し身なら一番おいしいところを女房に与え、次に娘に与え、自分は端っこをもらうようにしたら、『お父さん、変わったね』と娘に言われました」(笑)。
A氏はコロナのおかげで飲み歩くことがなくなり、血圧も下がった。時間ができたので仏教書を再読したり、家族のために毎晩料理をしたり、利他の喜びを実感していると話してくれた。
これから団塊世代が後期高齢者に突入していく。彼らの生き方が日本の高齢社会を良くも悪くも変えていくわけである。A氏のような臨死体験は誰もが体験できるわけではないが、「自分が変われば家庭、地域が変わる」。そんなメッセージを与えてくれた。
(光)