非現実的な秋入学よりも教育の質の保証が先決


 先週、文科省が小学校の9月入学に関する移行案を提示した。いずれも課題が多過ぎて非現実的な印象を受けた。

 大学の秋入学については、東大の濱田純一総長が2011年7月に秋入学を提案し、政府内でも議論した経緯がある。その頃は、大学のグローバル化が叫ばれていた頃でもある。入学前の半年をボランティアや社会貢献活動に当てれば、秋入学は意義があると期待する声もあったが、東大に追従する大学がほとんどなく撤回された。

 その後、国内の英語習得の環境が充実し、日本人の海外留学は実質ほぼ横ばい。逆に日本に来る留学生は2倍の30万人に膨らんだ。東大は留学生の半数を中国人が占めるほど。

 一方、世界大学ランキングの日本の低落が止まらない。THE世界大学ランキングによると、東大は11年の26位から、19年は42位まで転落した。20年は6ランクアップしたものの、それでも36位。

 秋入学議論では、海外の大学に行きやすくなると言うが、日本は超少子化である。官民挙げた「トビタテ!留学」で海外留学を後押ししてきたが、1年以上の本格留学は全く増えていない。主流のアメリカ留学は高コストの割にメリットが少ないことから激減している。結局、その国に留学するのは入学時期に関係なく、メリットがあるかどうか。もし秋入学にすると、9月入学制の中国人留学生がもっと来るかもしれない。つまり、国際標準の秋入学を導入すれば、日本人が海外に行くようになる。グローバル化すれば大学の世界評価が上がるわけではなさそうだ。

 世界の留学統計によると、近年欧米への留学移動は世界的に減少傾向にある。コロナ収束後は留学を含め、人の移動が抑制されるだろうと言われている。コロナ自粛による長期休校で突如再浮上した9月入学だが、まず教育の質の保証、大学教育の質を上げることが先決のようだ。

(光)