コロナ収束後も家庭で引き継ぎたいもの


 外出自粛で家にいる時間が長くなり、妻や子供との関わり方もこれまでとは変わっている。そのせいもあるが、筆者の目下の関心事はコロナ後に日本と世界の家族がどうなっていくのかということである。コロナ後の世界の覇権や経済問題がどうなるかという議論は増えている。また、例えば家族や夫婦の大切さに気付いた、家族のために仕事をしていると気付いたというような話は見られる。ただ、これからの家族の姿を考えるといった、まとまった議論は、筆者が知る限り起きていない。ただ、それを考えるヒントはあると思う。

 3年前、日本家庭教育学会の講演会に参加したことがある。講師は津田塾大学教授の三砂ちづるさん(以下、引用は同学会の雑誌『家庭フォーラム』第27号、2017年11月発行より)。

 講演の中で三砂さんは、家父長制の打破や個人の自由な生き方とか女性の解放といった旗印のもとに、家族だけが共に生きる道ではない、多様な生き方と暮らし方があるといった考え方が一時期流行(はや)ったけれども、結局は産業消費主義に絡め取られ、皆一人になって呆然(ぼうぜん)としてしまった。結局は性と生殖をその基礎とした、『家族』という許し合える場に戻ってくるしかないと、多くの人が感じているのではないかと語っている。

 そして、家庭で引き継いでいけるものは、目の前の人をあるがままで受け止める「無限の受容」ではないかという。自分より弱いものを守らなければならないとか、幼く小さいものをただ愛(いと)おしいと感じる感情があるからこそ、「人類はここまで、それこそ生き延びられたのである」。

 ほとんどの国民にとっては、家族が大切だということは当たり前のことだろう。もちろん過去の家族のあり方や家庭に問題がなかったわけではないし、今も児童虐待やDVなどの問題がある。変えるべき部分はある。一方で、引き継ぐべきものは引き継いでいきたい。

(誠)