広がる「赤ちゃん見守り宅配便」


 全国の児童相談所が対応した児童虐待相談件数が前年度より20%増の約16万人に上った。相談件数の増加にどの自治体も対応に苦慮している。

 学校・地域・専門機関の連携が進んでいる自治体では、各機関が把握している子供情報を1枚のスクリーニングシートにまとめ、虐待のリスクの高い子供の早期支援につなげる試みを始めている所もある。

 練馬区ではAI(人工知能)を活用し子供情報を解析、重篤化する可能性のあるケースを早期発見、早期対応する実証実験を4月からスタートさせる。児童相談所の専門人材の不足が指摘される中、面白い試みである。とは言っても、すべての子供情報をカバーするものではないので、戸別訪問によって虐待リスクの高い家庭を拾い出し、公的支援につなげることが大切だ。

 0歳児全戸訪問事業がそうだが、それ以外にも自治体独自でさまざまな訪問支援に取り組んでいる。4年前に滋賀県東近江市が始めた紙おむつを無料提供する「見守りおむつ宅配便」は、郵便配達員などによる高齢者見守りサービスの赤ちゃん版で、0歳児の子育て家庭の9割が利用している。

 東近江に倣って、兵庫県明石市が同様の「おむつセット定期便」を始める。生後3カ月から満1歳の誕生月までに10回、委託事業の配達員が紙おむつを届ける。子育て家庭の経済支援と虐待予防を兼ねた赤ちゃん見守り事業は他自治体にも広がる可能性がある。

 4月から体罰禁止を盛り込んだ児童福祉法が施行される。「体罰によらない子育て」を広めていく方向だが、孤立する子育て家庭にどこまで届くのかどうか。

 見守りが監視になってはいけないが、たとえ立ち話でも、話を受け止め、赤ちゃんを抱っこしてあげるだけで母親の不安やストレスがずいぶん軽減される。安心感を届ける、寄り添う支援に期待したい。

(光)