「ここまでわかった! 高齢者がんの予防と治療」

東京都健康長寿医療センター・北村明彦氏

 「ここまでわかった!高齢者がんの予防と治療」と題した老年学・老年医学公開講座(東京都健康長寿医療センター主催)が東京・王子の「北とぴあ」で開かれた。同センター社会参加と地域保健研究チームの北村明彦部長は、高齢者がかかりやすい「がん」、たばこ、多量飲酒などの危険因子、健康診断、適切な治療とバランスの取れた食事でがんの進行を抑える、継続的な運動で心身の機能を保って生活していただきたいと語った。

喫煙や多量飲酒などが危険因子

早期発見・早期治療のためにも検診を

 高齢化が進み、がんにかかる人が2人に1人と言われるようになってきた。昭和の時代は胃がんが多く、平成の時代では肺がん、大腸がん、脾臓(ひぞう)がんが増えている。肝臓がんでの死亡は平成10年ごろまで上昇していたが、横ばい・下降に転じている。男性では前立腺がん、女性では乳がん、子宮がんが中年期以降増えている。

「ここまでわかった! 高齢者がんの予防と治療」

東京都健康長寿医療センターセンター社会参加と地域保健研究チーム部長・北村明彦氏

 たばこの煙にはアセトアルデヒド、ホルムアルデヒドなどの発がん性物質が含まれ、煙を吸う肺にがんが発生しやすくなり、喫煙者は非喫煙者の4~5倍の危険度になる。受動喫煙も肺がんリスクが約3割上昇する。加熱式たばこ、電子たばこは紙巻きたばこほどではないにしても、一定の発がん物質(エアロゾル)が含まれ、日本呼吸器学界は電子たばこの使用は推奨できないとしている。

 アルコールも肝臓で分解される時に出るアセトアルデヒドが発がん性物質で、1日に日本酒3合以上の場合、1・6倍の危険リスクとなるというデータもある。たばことアルコールの過剰摂取は食道がん、膵臓(すいぞう)がん、胃がん、大腸がんの発生にも関与することが示されている。

 がんを防ぐ生活をしていても、遺伝的要素や家族の生活環境による体質、環境汚染、化学物質、紫外線、老化などの影響で絶対にかからないと保証することはできない。早期発見・早期治療の第一歩が検診だ。厚労省が定めた指針では、肺がん・胃がんのX線検査、大腸がんの便潜血検査、乳がんのマンモグラフィ、子宮がん、子宮頸部(けいぶ)の細胞診および内診などとなっている。これに対して、人間ドックなどの任意型のがん検診は肺がんのヘリカルCT検査、肝臓がんのB型・C型肝炎ウイルス検査、腹部超音波検査、大腸がんの大腸内視鏡検査、子宮がんの子宮体部の細胞診、HPV(ヒトパピローマウイルス)検査、前立腺がんのPSA検査、乳がんの乳腺超音波検査、胃がんの血清ペプシノゲン検査、ピロリ菌検査、脾臓・腎臓・胆嚢(たんのう)がんのCT検査、その他の腫瘍マーカー検査などがある。

 メリットは「早期発見・早期治療で死亡を回避できた」「がんがないことが分かり安心できた」など。デメリットは検診が手間、苦痛、合併症、費用。精密検査が手間。進行性のがんで見つけにくい、などが挙げられ、バランスを考慮し検診を受けることを勧める。

 がんにかかっても適切な治療を受け、医師相談しながら、病気が進行しないようなバランスの取れた食事や運動を続け、身体機能、認知機能、口腔機能、心理機能、社会機能などが衰えないよう気を付け、他の病気にかからないような生活を送っていただきたい。