足りぬ子育てのための人材


 筆者の妻は、高齢者のデイケア施設で働いている。年明けに介護福祉士の試験を受けるため、現在は勉強真っ最中である。

 介護の現場はとにかく人材不足だ。妻が繰り返しこぼしているのは、「今月も1人辞めた」というような話である。どうしたらいいのか。給与の引き上げなど待遇改善は必要だろうが、「それだけでは人は来ない気がする」というのが妻の意見だった。

 気になるのは高齢者に関わる人材だけではない。このところ子供の成長に関わる専門的知識を持った人材が不足しているという話を何度も聞く。

 例えば児童福祉司。児童虐待の相談件数が急増し、政府は2022年度までに児童福祉司を現在の3200人余りから新たに2020人増やす計画を立てている。しかし、虐待する親への対応など十分な業務能力を身に付けるには5年、10年の経験が必要だという。

 また、保育士も不足し、ここ数年は自治体の間で争奪戦が続いている。特に10月から幼児教育・保育の無償化政策が導入され、これまで以上に保育の需要が掘り起こされ、保育士不足が深刻化する。保育の質が低下する心配もある。筆者が会合で出会った保育士は、今回の無償化の政策には現場の保育士たちは危機感を抱いていると強い口調で語っていたのが印象的だった。

 教員の不足も深刻だ。病気や産休の教員に代わる臨時採用の教員を確保できず、教頭などが授業を行ったり、授業そのものができないケースも出ている。

 こうした人材不足をどうするのか。待遇改善や業務の効率化、そして「子供たちのために働く」やりがいや仕事の価値を伝えるという両面の対応が必要だろう。

 当然だが子供の成長には家庭の影響が大きい。専門的な人材の数が不足しているのであれば、親が親になれるよう支援を強化することや、地域との連携も重要になるはずだ。

(誠)