タクシー通学する小学生
いよいよ小学生がタクシーで通学する時代になったか――。昭和の終わり、バブル経済の時代なら、威勢のいい話となるのだろうが、実は四国の山間部の村で起こった悲しい現実だ。平成半ばに隣町と合併して新しい町の一地区となったが、その後も人口減少が進み、(旧)村の小学校は全校児童数が数人となって、4年前に(新)町の中心部の小学校に統合された。問題は10㌔ほどの山道を使う通学だが、車両(整備)費や人件費がかかる通学バスを導入するよりは、タクシーで一緒に通学する方が安上がりというわけだ。
その児童が通う町の小学校も生徒数の減少が続き、各学年とも 20人前後のクラスが一つだけ。全校生徒も140人をやっと超えるくらいだというから、筆者が通った昭和40年代の4分の1~5分の1程度しかない。当時の感覚からすると、山奥の小学校程度になってしまった。過疎地の人口減少は、目に見えて分かる切実な現実問題だ。
今年の全国の出生数が初めて90万人を割り込むことが確実になったという。第2次ベビーブームの絶頂期だった1974年に約203万人を記録して以降、出生数は徐々に減少し、2016年に初めて100万人を割り込み、昨年は過去最低の91・8万人だった。出生数から死亡数を引いた人口の自然減の方は昨年、過去最大の約44・4万人。全国最少の鳥取県の人口(約55・7万人)の8割、東京でいえば町田市(約43・4万人)が1年でなくなる計算だから、その深刻さは明らかだ。
とはいえ、今も人口が増加している東京に住んでいるとその実感がない。特に毎日、通勤の途中に、人であふれる渋谷の喧騒(けんそう)に接していると、人口の減少ではなくこの過密こそ問題だろうと思ってしまう。人口減少が目に見えるようになってから、その対策に取り組んでも時既に遅しだ。人込みの中で対策を練ることができる今が最後のチャンスかもしれない。
(武)