読書によって育つもの


 今月9日に行われた「天皇陛下御即位をお祝いする国民祭典」で、女優の芦田愛菜さんの祝辞が話題になった。中学生とは思えない品のある言葉を選んだ祝辞だったからだ。

 芦田さんは、天皇陛下が松尾芭蕉の『奥の細道』を読まれたことをきっかけに水の研究の道に進まれたことから、自分も大好きな読書を通じて知識を得て、その知識を踏まえて行動に移すことが大切だと考えるようになったと述べている。

 インターネット上では、芦田さんの言葉選びに対して読書好きの顔が見えると称賛する声もあったというが、確かに読書によって語彙(ごい)力が付き、想像力や知的好奇心、コミュニケーション力が育つというのは、一般的にも言われてきた。幼児期に親が本を読み聞かせることで子供の言語や社会性の発達を促し、問題行動が減るという。

 また、読書は子供だけでなく親にも影響を与えるという研究もある。読書(読み聞かせ)によって子供の心が安定することで、母親の育児ストレスが低下し、親子のコミュニケーションや愛着が深まるというのである(『「本の読み方」で学力は決まる』青春出版社)。海外では、重い障害を持った子供に母親が生後数カ月の時から繰り返し本を読み聞かせ、言語能力などの奇跡的な成長を遂げたケースなども報告されている。

 ちなみに、全国学校図書館協議会が今年行った調査によると、1カ月間に本を1冊も読まない子供の割合は、小学生6・8%、中学生12・5%、そして高校生は55・3%と、半数以上が1冊の本も読んでいなかった。

 一方で、厚生労働省が今年公表した調査では、親の読書量が多いほど、子供も多くの本を読む傾向があることが明らかになっている。親の姿勢も大きいというわけである。

 スマートフォンが中高生から大人まで席巻している現代だけに、芦田さんの祝辞から考えさせられた。

(誠)