ホームシックは国民病?


地球だより

 スイスに関するニュースや情報を発信しているウェブサイト「スイスインフォ」によると、ホームシックはスイス人の200年前の国民病だった。「牧人の歌に故郷への思いを馳せ、スイスの代表的児童文学作品『アルプスの少女ハイジ』の主人公の少女もこの病に悩まされた」のだ。

 ホームシックが病と認知されだしたのは1688年ごろで、その病状は「発熱、不整脈、衰弱、胃痛、うつ」などで、最悪の場合、死に至る病だった。ホームシックにかかる人は、故郷を離れ、外地で戦うスイス人の傭兵に多い病気と受け取られてきた。ホームシックの名付け親は、仏アルザス地方のヨハネス・ホーファーという医者だった。

 後日、別の医者が「高地の牧草地から低地に居住を変えれば、血液の濃度が高くなり、この種の病にかかりやすい」という研究結果を明らかにした。現代ではホームシックは病気ではない。

 誰でもが異国の地に住めば、時には郷愁の思いが募る。特に、「牧人の歌」を聞けば、多くのスイス人は郷愁にかられる。「ハイジ」にはホームシックに苦しむ少女ハイジの姿が描かれている。

 筆者は欧州に住んで約40年になるが、幸いホームシックになって、うつに陥ったことなどはないが、「ふるさと」と聞けば、室生犀星の詩をどうしても思い出してしまう。

 「ふるさとは遠きにありて思ふもの そして悲しくうたふもの よしや、うらぶれて異土の乞食となるとても、帰るところにあるまじや」

(O)