【上昇気流】 きょうは赤穂浪士討ち入りの日である


赤穂義士の墓

 きょうは赤穂浪士討ち入りの日である。元禄15年12月14日は新暦に直すと1703年1月30日になるが、忠臣蔵は師走の風物詩である。東京・三宅坂の国立劇場小劇場では文楽の「仮名手本忠臣蔵」を17日まで上演している。

 先週観(み)に行ったところ、満席だった。新型コロナウイルスの感染状況が下火になったこともあるが、やはりこの季節、忠臣蔵を観たくなるのが日本人だ。

 忠臣蔵については、歌舞伎や講談、映画そしてテレビなどで演じられるが、寛延元(1748)年に大坂竹本座で初演された人形浄瑠璃の「仮名手本忠臣蔵」が原型にある。それにまつわるさまざまな話の一つに、落語の「中村仲蔵」が挙げられる。

 仮名手本忠臣蔵の5段目「山崎街道の場」は、あまり見せ場がないため客が弁当を食べる「弁当幕」と呼ばれていた。ところが、早野勘平の舅(しゅうと)与市兵衛を殺害し金50両を奪った後、勘平がイノシシを狙って撃った鉄砲球に当たって死ぬという斧定九郎の冴(さ)えない役を、中村仲蔵という役者が水際立った侍姿に変えて大当たりを取る。

 NHKBSのドラマ「忠臣蔵狂詩曲NO.5中村仲蔵出世階段」はこの噺(はなし)を元にしている。仲蔵役を中村勘九郎さんが演じ、仲蔵を支える妻のお岸を朝ドラ「カムカムエヴリバディ」のヒロイン役でもある上白石萌音さんが好演していた。

 このような新しい物語を生み出す創造の源泉であり続けるところに、忠臣蔵の国民劇たる理由があるのだろう。