【上昇気流】12月の別名は「師走」という


もちつき

 「追ふ日あり追はるゝ日あり十二月」(清水忠彦)。12月の別名は「師走」という。稲畑汀子編『ホトトギス新歳時記』によれば「陰暦十二月の異称であるが、陽暦の十二月にもそのまま使われている。単に十二月というよりも、年の瀬の慌ただしさが感じられる」。

 この時期になると、何となく気ぜわしい気持ちになるのも、一年の締めくくりになるからだろう。スーパーでは、もう正月飾りの商品を見掛けるほど。

 気が早いとは思うが、年末に向けて準備万端といったところか。かつては、町の所々に仮小屋を造り、そこで正月飾りを売っていた光景が見られた。

 最近は見る機会がないが、その分スーパーなどが力を入れているのかもしれない。年末と言えば、ベートーベンの「第九」が演奏されることが多い。だが昨年は、新型コロナウイルス禍で演奏会が中止になったり無観客で行われたりした。

 第九の日本初演は、第1次世界大戦中にドイツ兵捕虜によって徳島県の収容所で開催された。しかし、年末に演奏するという習慣はなかった。恒例となったのは「歓喜の歌」というテーマや合唱が年の瀬にふさわしい気分を盛り上げることから受け入れられるようになったためだ。昨年はベートーベンの生誕250年だったが、コロナで思うように祝うことができなかった。

 しかし、今年はコロナに配慮しつつ各地で第九の歌声が披露される予定だ。今年こそは心置きなく第九を鑑賞してみたい。